2005-01-01から1年間の記事一覧

S「嫌われ松子の一生」 山田宗樹

幻冬舎文庫 ニュースやうわさ話で誰かを知る時、その人はもう既に「殺人犯」とか「騒音を出すおばさん」とか何者かの役名で語られる事が多い。最初からそうじゃなかったはずなのに、どこでそうなったんだろう?というのがいつも疑問で、その人が生まれてから…

M「ストーリーテラーたち―アメリカのフォークロア」 J・N・スミス  

大修館書店 またまた思い出し書きです〜。 都市伝説モノは好きでよく読みます。口裂け女とか人面犬とか、真偽よりも伝えられる噂を読むのが楽しいのです。 で、こちらもその伝かと思って読み始めたのですが、なんだかとっても真面目な本でした。アメリカの一…

M「古い骨」アーロン・エルキンズ

ずっと部屋がごったがえして本が出てこないため、昔読んだ本を繰り返し脳内再生して味わっているのですが、今日一日、何故かこれがグルグルと回って出て行ってくれないので、解放するためにも書いてみます。 シリーズものです。探偵は骨から手掛かりを推察し…

本好きさんへの100の質問・S

では私も、再チャレンジです 001. 本が好きな理由を教えてください。 別の時間を生きられる気がするからかな 002. 記憶に残っているなかで、最も幼い頃に読んだ本は? 「きかんしゃやえもん」か「てぶくろをかいに」 003. はじめて自分のお小遣いで買った本…

本好きさんへの100の質問・M

なぜか表示がおかしくなってしまうので、再チャレンジしてみますです(M) 001. 本が好きな理由を教えてください。 それがないと生きるのが困難だから。 002. 記憶に残っているなかで、最も幼い頃に読んだ本は? なんだろう。今思い出すのは「いやいやえん…

S「マンク」マシュー・グレゴリー・ルイス

国書刊行会 “聖職者”と“欲望”で思い出したのは、表紙のマーブル模様が美しい「世界幻想文学大系」の2巻と3巻に収録されたこの作品。 修道僧アンブロジオはその厳しい禁欲と高徳ゆえに悪魔の目にとまってしまい、破戒僧として堕ちてゆく。悪魔や尼僧の恋や…

M「欲望と抑制のあいだで」ゴードン・トーマス  

原書房 “尼僧の恋”でこれを思い出しました。これは聖職者が、性に対する欲望にどう対処しているか(または対処できていないか)を、五人の修道士及び修道女の軌跡を通して描いたノンフィクションです。 彼らが属するのはローマ・カトリック教会。これは本書…

M「ポルトガル文ーマリアンナ・アルコフォラドの手紙」リルケ訳

筑摩書房 手紙の一つに「恋文」ってありますよね。そして「恋文」で、私が真っ先に思い出してしまうのがこの一編。これはある尼僧が、恋焦がれた相手に出した手紙を、リルケが訳したものなのですが、もうヒシヒシと、彼女の愛情熱情が表れていて、非常に強い…

S「三島由紀夫レター教室」三島由紀夫

ちくま文庫 20歳から45歳までの5人の男女がやりとりする手紙だけで構成された小説。三島全集読破の勢いで夢中で読んでいた大学生の頃、この本にはちょっと「?」となってしまった。深刻で華麗で切れ味鋭く…というそれまで読んだ作品の印象とはかけ離れ…

S「地獄変・邪宗門・好色・藪の中」芥川龍之介

岩波文庫 それではさらに昔、王朝時代の日本へ行きましょう。七つの古い時代の物語。 「袈裟と盛遠」「藪の中」で描かれるもどかしさがとても好き。どんなに言葉や身振りを尽くしても、思った通りをそのまま伝えるのは難しい。相手の眼差しやしぐさから情報…

M「猿の眼」岡本綺堂   

図書刊行会 ハイ、綺堂さんです。表題作のほか「鰻に呪はれた男」「置いてけ堀」などなど、“怪談”が13篇収録されていますが、私は怖いというよりほのぼのしながら読みました。 それは講談調の語り口が、江戸末期〜昭和初期情緒を感じさせて、どこか懐かしい…

M「小僧の神様―他十篇」志賀直哉

岩波文庫 …と、同じのをあげるだけでは何なのでこれを。 「小僧の神様」が一番好きです。これは、番頭さんの話を聞きかじって「お寿司食べたいなー」と思った小僧さんが、お使いの帰り道通りかかった屋台のお寿司屋さんで、思い切ってお寿司に手を伸ばすけれ…

M「高野聖・眉かくしの霊」泉鏡花

岩波文庫 わーい高野聖♪やっぱり音読といえば泉鏡花も外せませんよねっ。実は「山月記」と「高野聖」、どちらを先に書こうか迷いました(笑) 『飛ぶ鳥も見えず、雲の形も見えぬ』『其よりも寧ろ俗歟』『若いの、聞かつしやい』『天窓から嘗めて居ら』7分の…

S「高野聖・眉かくしの霊」泉鏡花

岩波文庫 旅籠の夜、旅の僧が語る怪異譚。大蛇や蛭で難儀な山中を越えて僧が出逢ったのは、峠のあばら屋に暮らす美女。かつて彼女を愛した男達を蛇や蛙や牛馬に変えて侍らせ、腰の抜けた口も利けぬ幼い亭主を世話する。優しさの中に強みのある、気軽に見えて…

S「山椒大夫・高瀬舟」森鴎外

岩波文庫 有名なタイトル2作と他4作が収録されている。漢詩文の香りから「魚玄機」「寒山拾得」を含むこの本を連想した。堅くて教育的な印象があるが、登場する心正しい人達やドラマチックな筋書きには魅力がある。 「最後の一句」は16歳の娘が処刑され…

M「山月記」中島敦 

岩波文庫 ついつい音読したくなっちゃう本で真っ先に思い浮かんでしまうのが、この「山月記」! 私は殆ど日本の方が書いた小説を読んだことがないのですがm(_ _)m、これは繰り返し繰り返し読みました。もう冒頭 隴西の李徴は博学才穎、天宝の末年、若くして名…

S「屈辱ポンチ」町田康

文藝春秋 「もっと有意義な人生を送りたい」と妻が英国留学してしまって以降、脚本家はとにかくツイていない。仕事はなくなり、部屋には肉食虫が繁殖し、家主でもある義父には出て行くよう申し渡される。仕事の依頼主である怪しい老人について行った所から、…

M「ダーティ・ホワイト・ボーイズ」スティーヴン・ハンター  

芙桑社 読み出したら止まらない、悪党三人の逃走劇。中心となるのは“刑務所一のデカイ一物をもつ白人”ラマー・パイです。ラマーは馬鹿力でちょっと頭の足りないイトコ、入ったばかりの気の弱い元美術教師を誘い、三人で重犯刑務所を脱走します。追うのは悩め…

S「遙かなる虎跡」景山民夫

新潮文庫 マレー半島を舞台にした宝探し冒険活劇。ボルネオの森林保護区でオランウータンの保護し自然に帰す仕事をしている西緑郎は、病院で同室のチャン老人から封筒を託される。手紙と3カラットのダイヤが入った封筒を老人の年若い従姉妹アイリーンに届け…

M「スミラの雪の感覚」ペーター・ホゥ  

新潮社 昨日の文章を書いていてこの本を思い出しました。コペンハーゲンを舞台にした海洋冒険ミステリーなのですが、私は筋立てよりも、そこに登場する人物たちに惹かれました。 イヌイットを母に持ち雪と孤独を愛する37才独身女性の主人公スミラ、クッキー…

M「旅が好き、食べることはもっと好き」邸永漢

新潮文庫 点心手作り、しかも皮からですかっ!すごいなあ…。私は何もこれといった出来ることがないので尊敬です。当然お料理なんかもヒドイものです(恥)お料理本はただ眺めるだけ、食べ物エッセイも読んで「へー」「ほー」で終わりというていたらく。これ…

S「幼ティさんの北京的点心」孫幼ティ

文化出版局 たいそう探したのだけど、アーティさんのティが見つからなかった。本当は女へんに亭で「ティ」。 私は凝り性で当然のように飽き性だ。たまに料理に凝ることがある。中国茶に夢中になった時、お茶の魅力を余すところなく味わう為に熱心に点心を作…

S「フィールドワーク 書を持って街へ出よう」佐藤郁哉

新曜社 社会学や文化人類学*1の調査・研究をする時、アンケートなどのサーベイ調査と参与観察とも呼ばれるフィールドワークという二つの方法がある。前者は限られた項目で効率よくアンケートを取り、傾向をグラフ化して客観的に見せることが得意。後者は深く…

S「悪童日記」アゴタ・クリストフ

早川書房 戦争中の東欧、国境近くの“小さな町”で魔女と呼ばれる祖母と暮らす双子の少年の話。空腹に耐える鍛錬、ひどい言葉を浴びせあう精神の鍛錬をし、ふたりだけでの勉強や、殺すことに慣れるために毎週動物を殺す。弁護士そこのけの明晰な言葉を操り、カ…

M「死に急ぐ子供たち」シンシア・R・フェファー

中央洋書出版部 これは、小児の自殺についての臨床精神医学的研究をまとめた本です。なーんていうと、なんだか小難しそうですが、本書は自殺する子供たちについて、あらゆる角度から焦点をあてており、症例豊富で読みやすいです。 カール・メニンガー曰く、 …

M「親を殺した子供たち」エリオット・レイトン

草思社 すべての大量殺人と同様に、家族殺人は自分自身のための行為である。(中略) その目的は主体性をとりもどすことであり、革命に火をつけることではない。 子供をテーマにした作品って、フィクション・ノンフィクション問わず何故か惹きつけられてしま…

S「恐るべき子供たち」ジャン・コクトー

角川文庫 散乱した部屋で暮らすエリザベートとポールの姉弟。子供特有の神経質さと残酷さ、気分の高揚や夢想癖が丁寧に描かれている。ゼラニウムのような匂いのする毒薬の黒い玉やポールの胸を打った雪玉、パルム菫の造花などの魅惑的な小道具で築かれたふた…

M「誕生日の子どもたち」トルーマン・カポーティ  

文藝春秋 カポーティ!「ミリアム」は、ほんとイヤぁ〜な感じでゾッとしますよね。 エキセントリックを普通に描くのがとっても上手なカポーティ。この短編集の表題作になっている「誕生日の子どもたち」は、彼の作品の中では今のところ一番好きかもな作品で…

S「夜の樹」トルーマン・カポーティ

新潮文庫 9編の不思議な短編小説。「ミリアム」では、マンハッタンで一人暮らしをする61歳の女性が主人公。ある夜映画館でひとりの女の子と出逢う。絹のドレスにシルバーホワイトの長い髪、子供らしさのない大きな目。雪に閉ざされたある夜、マンションに…

M「遊び相手」A・M・バレイジ  

早川書房 ★ネタばれしてます! 冷静に読んだらきっとたくさん穴があったり歪だったりするんだろうなあって思いながら、どうしてもどうしても、弱い作品というのがあって、これもそんな沢山あるうちの一つです。 初老の独身男性エバートンが、縁もゆかりもな…