M「ストーリーテラーたち―アメリカのフォークロア」 J・N・スミス  

大修館書店


またまた思い出し書きです〜。
都市伝説モノは好きでよく読みます。口裂け女とか人面犬とか、真偽よりも伝えられる噂を読むのが楽しいのです。
で、こちらもその伝かと思って読み始めたのですが、なんだかとっても真面目な本でした。アメリカの一町で、町おこしのためにストーリーテラー大会が始まった経緯に始まり、数々のストーリーテラーたちの生い立ち・なぜストーリーテリングしはじめたか・そして彼らの代表的お話を収録しています。
読んでて改めて思ったのは、「ああ、お話は必要不可欠なのだ」ということ。漫画・映画・アニメ・本、様々な形を取りつつ、それらのお話がなければ、少なくとも私は生きていくのは難しい。そしてそれは私だけでなく、他の人々にとってもそうなのかもしれないなあともフト思いました。昔話を語り継ぐ大会が二十六年も続き今や一万人もの人を集めること、「ストーリーテラー」という職業が成立していること、これらを見ると、遠い昔井戸端で「昔昔あったげな…」で始まるお話を、これほど多くの人たちが心待ちにし大切にしているのが実感できます。
収録されているお話は幾つかの系統に別れていて、「南アパラチア山岳のお話」「ユーモアとウィットあふれるお話」「はるかな昔と彼方のお話」「不思議なお話」「アメリカの伝承民話」「実話とファンタジーの人情話」などいろいろあるけど、私が一番ぐっときたのは「家族・知人のお話」の、ブラザーブルーによるワンダーリック先生の話です。「ブルー君、先生はあなたの事愛しているよ。あなたの中に、ほら、蝶々がみえるわ」で、もう泣きます泣きます号泣です。アイルランドのマギによる、年の離れたいとこがクリスマスに素敵なお人形の家を買ってくれた話も涙ダダ漏れでした。『ああなんて嬉しい話なんだろうなあ。そんな思い出が一つでもあれば、辛いときでも頑張れるんだろうなあ。そして、そんな想い出は、きっと、誰にでも、ある。思い出せるか思い出せないかだけかもしれないなあ』なんてことを思いました。