2005-02-01から1ヶ月間の記事一覧

M「サイキック・ロシア」中島渉  

徳間書店 今回は、タイトル「サイキック」つながりです。 これが出版されたのは1991年ですが、当時のロシアの混迷した状況及び民族のねじれがどこからきたのかを、歴史的・全土的に広い視点で見渡して分析しています。広い視点なだけに少し浅いかなと思うと…

S「サイキック・アニマルズ−動物たちの不思議な知恵」デニス・バーデンス

草思社 動物には不思議な能力がある。老婦人が岩場から落ちて動けなくなっていることを、一羽のカモメが家族に知らせにくる。傷つけられた仲間の仕返しをしに行く犬や、寝ている家族に火事を知らせて逃げ遅れた子猫。身体の不自由な女性の世話をする小さな猿…

M「このページを読む者に永遠の呪いあれ」マヌエル・プイグ  

現代企画室 タイトルがすばらしく印象的なこの作品は、ある老人とその介護人である若い男、この二人の会話文のみでほぼ成り立っています。老人はラテンアメリカで政治犯として拷問された過去があるためか精神的に不安定で、青年は生活のため仕方なく介護人を…

S「蜘蛛女のキス」マヌエル・プイグ

集英社文庫 テロリストとゲイが一緒に過ごす刑務所の話。夜ごとゲイのモリーナが好きな映画のストーリーを語って聞かせる。映画の話をこんなに上手にできる人を他に知らない。いくつもの話が語られるうち、年齢も思想も好みも話し方も全く共通性のないふたり…

S「赤いろうそくと人魚」小川未明

潮文庫 美しく哀しい童話集。たった3頁半の作品「金の輪」では、病気で長い間寝ていた太郎が主人公。やっと起きられるようになって外に出た時、2つの金の輪をまわしながら走ってゆく少年と出会う。2日続けて現れ微笑しながら走り去る少年は、ずっと親しい…

M「点子ちゃんとアントン」エーリヒ・ケストナー   

岩波少年文庫 私も現実がそうじゃないからこそ「きれいごと」に心打たれます。で、『「きれいごと」と言われればそうだけどっ!』と半泣きで読んだのがこの作品。「良い子に向けた教育的童話」「定型おとぎ話」そんな言葉が頭をよぎりつつ、それでもそれでも…

S「ハードボイルド/ハードラック」吉本ばなな       

(株)ロッキンオン(文庫版は幻冬舎) 「ハードボイルドね…」と考えた挙げ句、タイトルそのままですね。すみません。表紙の絵が奈良美智さんでとても可愛らしい。二つの小説のうちで「ハードボイルド」の方が私は好き。日常にオカルト要素があっても特に違…

M「初秋」ロバート・B・パーカー

ハヤカワノヴェルズ ではでは、ハードボイルド系*1から一冊。実はコレ、読む前はちょっとおっかなびっくりでした。とっても有名な私立探偵スペンサー。「食通で洒落者で詩が好きでボクシングも強くて、苦境でも気の利いたセリフを吐く」なーんて設定だけで軽…

S「私の嫌いな10の言葉」中島義道

新潮社 哲学者の作者が本気で嫌う10の言葉。善良な人達の優しく思いやりのある言葉には不純で残酷なものが潜んでいる。「おまえのためを思って言ってるんだぞ!」「自分の好きなことがかならず何かあるはずだ!」の章は納得。建前だけの言葉は相手をやんわり…

M「男になるのだ」橋本治  

ごま書房 この本を読んだのは出版されて4年くらい後で、私にとって久しぶりの橋本治だったのですが、一読して“うーん、相変わらず頑張ってるなあ”と思いました。「男に生まれるのではない、男になるのだ」というこの本は、<なぜ男は家の中の事が出来ないか…

S「星々の悲しみ」宮本輝

文春文庫 梅田の予備校に通う青年の春から冬を描いている。彼はその年、勉強をうち捨てて中之島図書館で162篇の小説を読みふける。物語の世界に耽溺しながら、彼を取り囲む現実の世界にも目をこらす。春、美しい女子大生に目を奪われ、同じ予備校生である…

M「巡礼」マッシモ・ボンテンペッリ

図書刊行会 街に一人の知り合いもなくピアノと数十冊の本を友に暮していた青年は、ある夕暮れ、不思議な人々の列を窓からみかけます。ひたすら歩き続ける人々、時たま歌われる合唱。青年は何故かその行列に加わって、人々と共に歩き続けるうちに森に入ってゆ…

S「人はどこまで残酷になれるのか」桐生操

中央公論新社 洗練されたセンス、優美な曲線やミニマムなデザインはとても素敵。にもかかわらずゴテゴテした悪趣味な物に惹かれるのはなぜだろう。巨大なポンパドゥール(リーゼントも可)とか、ドラアグクイーンのつけまつげとか、豹皮のカーペットなんかが…

M「悪趣味百科」ジェーン&マイケル・スターン

新潮社 もう笑ってしまいます。アメリカン・ポップ・“ウンコ”・カルチャーを扱ったこの本は、これでもかこれでもかと、“悪趣味”なものを一つ一つ取り上げ、「それが何故生まれたか」「人々はどのようにハマったか」を解説していきます。対象も様々で、エルヴ…

M「ママゴト」城昌幸

図書刊行会 夢の中でしか訪ねられない“わが街”を訪ねたあとは、ぼんやりとしながら何か懐かしい不思議な気分になったりします。そしてなんとなく、キリコの「通りの神秘と憂愁」を思い出したりします。 懐かしいのに存在しない。本物だけど本物じゃない。 こ…

S「夢日記」島尾敏雄

河出書房新社 ここにも夢独特の時間が流れている。昼間の意識と違う目で見える現実と非現実。妻ミホや子供達と共に暮らした現実の時間に加えて、夢の日常でも家族との思い出があるのだ。もういない人達との生活がこの世界では続いており、現実とよく似ている…

M「ガルシア=マルケス全短編集」

創土社 うはー、ガブリエル・ガルシア=マルケス!「オメーの生涯の100冊あげやがれ」と言われたら、まず確実に入ってくるであろう作家です。 で、「え〜っえ〜っどどどれにしようううう」と思ったのですが、やはりここはひとつ短編集をあげてみます。「全短…

S「青い犬の目」ガルシア=マルケス

福武書店 副題は「死をめぐる11の短編」。あからさまに死が登場しない話もあるが、どの人生も刻一刻と死に向かっているのだから、死と切り離された小説はないのだとも思う。 「青い犬の目」の閉じて安定した雰囲気が好きだ。夢の時間は別の言語や規律が支…

M「きみの血を」シオドア・スタージョン    

ハヤカワ文庫NV では、一風変わった吸血鬼ものを。ああでも、これって吸血鬼ものって言えるのかしらん。とっても説明しにくいです。 とある米軍駐屯地で、ある兵士が彼の異常な手紙について訊問されます。激昂した兵士はコップを握り潰しちゃうのですが、破…

S「ヴァンパイア・レスタト」アン・ライス

扶桑社 「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」として映画化された「夜明けのヴァンパイア」の続編。第一作ではニューオリンズの空気や18世紀末フランスの雰囲気に引き込まれて一気に読んだ。続編が出たと知って待ちきれずにペーパーバックを買ったけれど当…

S「チャック・ベリー(自伝)」

音楽乃友社アクの強さではこちらもなかなか。カバーからして圧倒的。上半身裸(おじさんなのに腹筋割れてます!)でギターを抱えている正面と後ろ姿の写真が表紙になっている。誰でも知っているフレーズや格好良いダック・ウォークが魅力のチャックだが、そ…

M「伝説のジャクリーン」カトリーヌ・パンコル  

扶桑社 私はジャッキー・ケネディ・オアシスについては殆ど知らなかったので、読んで驚かされました。ジャッキーに関する記事を垣間見ると、だいたい“美しい”と称されていて、個人的にはジャッキーを美形だと思ったことがない私は不思議だったのですが、読み…

S「百器徒然袋−雨」京極夏彦

講談社 「京極堂シリーズ」の主要登場人物・榎津礼二郎を主人公にした一冊。探偵小説と銘打ってはいるけれども、探偵小説好きのMさんが読んだら怒るかも。この探偵は推理をしない。というのは彼には相手の目撃した物が「見える」から。他の人には見えない物…

M「薔薇荘にて」A.E.W.メイスン

国書刊行会 うっふっふっふ。大好きな「世界探偵小説全集」の栄えある1でございます。 南フランスの保養地で、裕福な老婦人が惨殺されて宝石が奪われます。残された証拠からは、姿を消した美しい女同居人が犯人だと思われますが、女同居人に恋心を寄せてい…

M「ヘビトンボの季節に自殺した五人姉妹」ジェフリー・ユージェニデス

早川書房 たくさんいろいろ連想したのですが、タイトル妹つながりでこれを。 これは、次々に自殺したリズポン家の10代の5人姉妹に憧れていた“ぼくたち”が、彼女達の思い出と共に、なぜ死んでしまったかを推察しようとする回想録の形をとっています。 男の子…

S「花を運ぶ妹」池澤夏樹

文藝春秋 目に鮮やかな色彩とむせかえるような香りの花と果物、棚田の静けさと街の喧噪。舞台はバリ島。絵描きの兄は旅の途中、麻薬中毒になり投獄されてしまう。妹は兄の冤罪を信じてバリ島へ向かい、救い出そうと賢明の努力をする。兄「哲郎」と妹「カヲル…

M「刀剣金工図絵」深海信彦+善財一

PHP研究所 着物といえば武士…という訳では全然ないですが、眼にも心地よいこれを。 刀周りの装飾品といえば根付くらいしか思い浮かばなかったのですが、これに掲載されている鐔(つば)*1の美しいこと!絵柄のモチーフとなる物語も、源平・義経・三国志*2…

S「樋口可南子の きものまわり」清野恵里子

集英社 私は着物が好きで、たまに着る。けれど飲みに行く時は終電が心配で自転車で出るし、もしも泥酔した場合(あまりないけどさ)和服の酔っぱらいはみっともないな…と思案の末に洋服にする。散歩好きで普段のおでかけ時にはやたら歩くので、楽な格好にす…

M「蜘蛛」H・H・エーヴェルス

創土社*1 「生きてはいない(生きている人間ではない)絶世の美女が若者を誘惑する」しかもその名が「クラリモンド」ときたら、これを挙げずにはおれますまいっ。 ある部屋で原因不明の自殺者が多発します。その原因を追究すべく医学生リシャールは、警察の…

S「死霊の恋・ポンペイ夜話 他三篇」テオフィル・ゴーチェ

岩波文庫 神学校を卒業したばかりの若い僧侶に吸血鬼クラリモンドが恋をする。司教によって救われるが、66歳になった今も忘れることのできない面影としてつきまとう死霊の美女。 ポンペイの遺跡を旅する若者が、女性の身体の形が押された溶岩を見て想いを…