2005-03-01から1ヶ月間の記事一覧

M「親を殺した子供たち」エリオット・レイトン

草思社 すべての大量殺人と同様に、家族殺人は自分自身のための行為である。(中略) その目的は主体性をとりもどすことであり、革命に火をつけることではない。 子供をテーマにした作品って、フィクション・ノンフィクション問わず何故か惹きつけられてしま…

S「恐るべき子供たち」ジャン・コクトー

角川文庫 散乱した部屋で暮らすエリザベートとポールの姉弟。子供特有の神経質さと残酷さ、気分の高揚や夢想癖が丁寧に描かれている。ゼラニウムのような匂いのする毒薬の黒い玉やポールの胸を打った雪玉、パルム菫の造花などの魅惑的な小道具で築かれたふた…

M「誕生日の子どもたち」トルーマン・カポーティ  

文藝春秋 カポーティ!「ミリアム」は、ほんとイヤぁ〜な感じでゾッとしますよね。 エキセントリックを普通に描くのがとっても上手なカポーティ。この短編集の表題作になっている「誕生日の子どもたち」は、彼の作品の中では今のところ一番好きかもな作品で…

S「夜の樹」トルーマン・カポーティ

新潮文庫 9編の不思議な短編小説。「ミリアム」では、マンハッタンで一人暮らしをする61歳の女性が主人公。ある夜映画館でひとりの女の子と出逢う。絹のドレスにシルバーホワイトの長い髪、子供らしさのない大きな目。雪に閉ざされたある夜、マンションに…

M「遊び相手」A・M・バレイジ  

早川書房 ★ネタばれしてます! 冷静に読んだらきっとたくさん穴があったり歪だったりするんだろうなあって思いながら、どうしてもどうしても、弱い作品というのがあって、これもそんな沢山あるうちの一つです。 初老の独身男性エバートンが、縁もゆかりもな…

M「神々は乾く」アナトール・フランス   

岩波文庫 でわでわ同じく岩波文庫から、フランス革命を描いたこれを。 たくさん登場人物が入り乱れるので、まずそれを覚えるのに苦労しますし、歴史モノですので、当時の背景に関する注もや〜たら多くて、思わずウキーッとなりますが、しかし!いったんそれ…

S「トリスタン・イズー物語」ペディエ編

岩波文庫 中世ヨーロッパの大悲恋。人食い竜や竪琴、美しい髪の乙女、妖精、魔法の鈴、騎士の輝く鎧。読んでいるとステンドグラスに固い線で浮かび上がる物語を眺めているような気分になる。美丈夫トリスタンはイズーの伯父モルオルトの敵、黄金の髪のイズー…

M「陰獣」江戸川乱歩   

東京創元社 きゃーきゃー「芋虫」!もしかしたら乱歩の中で一番好きかもな作品です。初めて読んだのは中学生でしたが、なんだかいけないものを読んでいるような気持ちで、どきどきびくびくしたのを覚えています。 そんな「芋虫」と同時期に読んで同じ位クラ…

S「江戸川乱歩傑作選」江戸川乱歩

新潮文庫 若い明智探偵が出てくる洒脱な「D坂の殺人事件」「屋根裏の散歩者」や、ソファに座る度にぞっと戦慄を感じてしまう「人間椅子」を含め、初期の小説が9編収録されている。中でも恐ろしくて悲しいのが最後の「芋虫」。戦争で負傷して奇跡的に帰還し…

M「今日は死ぬのにもってこいの日」ナンシー・ウッド 

めるくまーる 今日は死ぬのにもってこいの日だ。 今日は死ぬのにもってこいの日だ。 生きているものすべてが、わたしと呼吸を合わせている。 すべての声が、わたしの中で合唱している。 すべての美が、わたしの目の中で休もうとしてやって来た。 あらゆる悪…

S「それでもあなたの道を行け」ジョセフ・ブルチャック

めるくまーる アナベキ・インディアンの血を引く著者が集めたアメリカ先住民の知恵の言葉110篇。各部族の教えや古い儀式の言葉や聖なる歌、長老達のメッセージ、シアトル首長の演説抜粋など様々な言葉の断片が集められている。シンプルすぎる為に当たり前…

S「体の贈り物」レベッカ・ブラウン

マガジンハウス Mさんのレビューに思わず爆笑。なぜなら私も「いつか面白くなかった本の話になったらこれ書こう」と思っていたのが『ベロニカ』なんだもん。タイトルとカバーですっかり期待してしまって、「もうそろそろ面白くなるはず」と騙し騙し読んだけ…

M「ベロニカは死ぬことにした」パウロ・コエーリョ  

角川書店 ★ご注意!今日のMはとっても辛口です タイトルが魅力的ですし期待を持って読みはじめたのですが、読後思わず『ハア?』と呟いてしまいました。主人公が遺書がわりに雑誌社へ抗議文を書くという導入部分は良かったのですが、その後の展開はダダ崩れ…

S「異端の肖像」澁澤龍彦

河出文庫 ジル・ド・レエやヘリオガバルス、モンテスキウ等、ヨーロッパ史上独特な7人の異才について語られている。 バヴァリアの狂王と言われたルードヴィヒ2世もお気に入りの城を作ってそこで暮らした人。幻想的な雰囲気を愛した王は洞窟の部屋や、ヴェ…

M「ネヴァーランドの女王」ケイト・サマースケイル 

新潮社 型破りな女性の伝記、ということで思い出したのがこの作品。これは1920年代に名をはせた、“ジョー”カーステアズについての伝記です。どんな人かと申しますと、大富豪の娘に生まれてモーターボートを乗り回し、男装して数々の女優と浮き名を流し、果て…

S「白州正子自伝」白州正子

新潮文庫 今日はこの本について書こうと決めて帰宅したら、すでにMさんの本が掲載済みだった。ふーん、吉田健一氏とは誰だろう?調べてみたら、吉田茂・元首相のご子息らしい。吉田元首相の懐刀と言えば、大正から昭和期のダンディ白州次郎。その夫人が私の…

M「饗宴 他」吉田健一  

図書刊行会 吉田健一さんはこの短編集で初めて読んだのですが、一読して「喰えないおじいちゃんだなあ〜」と思いました。お酒を飲み歩いたり、ふらり気ままに旅したり、自分の食べたいものを延々空想したり。「広い場所に人間が少なくて始めて文化と呼ぶに足…

M「路上」ジャック・ケルアック   

河出文庫 「古典」で「主人公が放浪している」もの、というわけでこれを。 ビート世代のバイブルとなったこの作品の中で主人公は、ヒッチハイクをしながらアメリカ大陸を何度も横断し、様々な人と出会います。奇矯な人物もいるしそれなりに事件もおこり躍動…

S「放浪記」林芙美子

新潮文庫 生まれながらに故郷はなく、放浪を重ねる日々。工場でアルバイトをしながら(大正時代に!)女学校に通う。カフェーの女給や事務員、女中、行商、就いた職種も多種多様だ。向っ気の強さと可愛らしさが同居した不思議な魅力に参ってしまう。どんなに…

S「これいただくわ」ポール・ラドニック

白水社 ニューヨーク郊外に住む3姉妹と3女の息子による、ニューヨークからメイン州のL.L.ビーンまでの怒濤のお買い物ツアー。買い物こそ人生、買い物こそ哲学、「センスの良いお買い物」こそが目指す所なのだ。物欲万歳!なお話で、すごくうるさく俗っぽい…

M「NYナイトトリップ」横森理香   

扶桑社文庫 世はバブルまっさかり、株屋のヒラリンのお金で贅沢な暮らしをしていた女子大生の主人公は、自分の浮気が元で放り出され、逃げるようにNYへ向かいます。 著者の経験を元にしたこの本は、正直よくあるお話ですし、著者の考え方も個人的には「?…

S「カムデン・ガールズ」ジェーン・オーウェン

ソニー・マガジンズ ロンドンのもうひとつの夜の顔。筋金入りのクラブフリークだった著者がロンドンの週末48時間を駆け抜ける女の子達を描いた小説。 ジュノーと友人達はいつもゲスト扱いでパーティーへ出かけ、移動のリムジンにもただ乗り。金曜の夜の留…

M「夜にめざめて:ある娼婦の告白」ジャクリーン・ウォード

青弓社 こちらはロンドンの、元プロの娼婦だった著者によるノンフィクションです。 世界最古の職業の一つである「娼婦」は、一般に社会的には“穢れたもの”“侮蔑の対象”とされることが多いように思うのですが、私自身は決してそうは思いません。 しかしここに…

S「上海ベイビー」衛慧

文春文庫 25歳の主人公が尊敬する人はヘンリー・ミラーとココ・シャネル。各章の前に引用されるテキストもお話に出てくる様々な固有名詞*1も、私が親しんできたものと同じ。上海の女の子の生活を形作る成分や精神構造は、大阪の女の子とあまり変わらない。…

M「ゴーイング・ダウン」ジェニファー・ビル  

青山出版社 ではもう一つニューヨークが舞台の小説を。こちらは気軽に読めちゃいます。 同棲していた恋人のアパートから追い出された19歳の主人公が、軽い気持ちで“エスコート・サービス”の仕事を始めるのですが、あっというまにそれにはまっていってしまい…

S「レス・ザン・ゼロ」ブレット・イーストン・エリス

早川書房レビューで連想したこの作品とは同じ作家だったのですね。道理で同じ匂いがすると思った。 これも、なんだか痛いなぁと思いながら読んだ記憶がある。先に映画を観てしまったので、本の中でロバート・ダウニーJrが歩き回っていた。80年代のビバリー…

M「アメリカン・サイコ」ブレット・イーストン・エリス

角川書店 読みながら、思わずうわあああと言ってしまいました。主人公は、ウォール街で働くエリートビジネスマン、パトリック。冒頭より延々と語られるのは、「ステレオについて」「ファッションについて」「ヒップな店について」の自慢の応酬と、ひたすら行…

M「ショールの女」シンシア・オジック  

草思社 でわでわ、同じくホロコーストがらみの小説を。ああでも、お話にからむというより、お話の芯になっていると言った方がいいかもしれないです。 ホロコーストをくぐり抜け、フロリダに独り住む老女ローザは、三十年たったいまも死んだ赤ん坊の幻だけを…

S「朗読者」ベルンハルト・シュリンク

新潮文庫 15歳の少年が36歳の女性ハンナと恋に落ち、彼女の部屋を訪ねては様々な本を朗読する。年齢差を超えた不思議なラブストーリーは、彼女の突然の失踪で終わる。やがて運命は大学生になった少年と彼女を再会させ、ハンナの秘密が法廷で掘り起こされ…

M「田辺聖子珠玉短編集」

角川書店 「きもの」レビューを読んでなんとなく思い出しました。田辺聖子さんはいつ読んでも安定した心地良さをいただけます。ほんのりと関西弁で語られる、ついその辺にいそうな人たちの、もーしゃーないなー話が、とっても良いです。しみちゃいます。笑え…