S「体の贈り物」レベッカ・ブラウン

マガジンハウス


Mさんのレビューに思わず爆笑。なぜなら私も「いつか面白くなかった本の話になったらこれ書こう」と思っていたのが『ベロニカ』なんだもん。タイトルとカバーですっかり期待してしまって、「もうそろそろ面白くなるはず」と騙し騙し読んだけれど、最後まで挽回できずに読了。主人公が夜の病院でピアノを弾く青年と踊る所(うろ覚え)は、ただそのシーンが書きたかっただけなのだろうなと思った。


図書館で『ベロニカ』と同時に借りて読んだ「体の贈り物」は、予想以上に面白かった。ホームケア・ワーカーである「私」とエイズ患者達の11の物語。淡々と描かれる日常。食事をし、入浴し、話をするというような日々のシンプルな時間が大切に語られる。主人公のそれまでの人生とか容姿についてはほとんど出て来ない。「今」がそこにあるだけ。社会的にエイズを描くとか、感動シーンの連続などではなく、いつかは失われてしまう毎日を静かに見つめる。死にゆく人ばかりが出てくるが、決して暗くはない。ただ前向きでもない。読みやすくて、しみじみ「良いなぁ」と思える作品。