M「幽霊狩人 カーナッキの事件簿」ウィリアム・ホープ・ホジスン

創元推理文庫

 

 

「吸血鬼」→「ゾンビ」→「幽霊」の流れにわくわくが止まらないMです。

 

がっつり真正面から幽霊を取り扱ってる怪奇譚も大好きなのですが、
今回は科学と魔術の両面から怪奇譚を取り扱ったこちらの連作短編集。

 

「幽霊狩人」と題されてますが、主人公カーナッキには霊能力がありません。
じゃあどうやって幽霊を狩るかって?
古文献から得た魔術の知識に現代科学、更に自ら開発した電気式五芒星(!)が彼の武器!
武器はあるけどめちゃビビリ!しょっちゅう逃げ出したり怖がったりしています。

 

結末は合理的に説明できるものだったり、科学的に解明できない幽霊の仕業としか言えないものだったり。
個人的には幽霊譚の方が好きでした。
一番印象に残ったのは「口笛の部屋」の怪奇現象。
敵王を嘲る歌を謡ったため、舌を抜かれ火あぶりにされる道化師。炎に包まれ絶命しているはずなのに聞こえる口笛。
うわーーーー凄惨…そして物悲しい…。
大好きなエドガー・アラン・ポーの「飛び蛙」を思い出しました。

 

 

 

S「幽霊たち」ポール・オースター

新潮文庫

 

ゾンビから少し変わりますが、アメリカの80年代の作品つながりで、最近亡くなったボール・オースターを。

久々に読み返しました「幽霊たち」です。

 

タイトルはゴウスツだけど、ゴスみはゼロです。

でも空虚な感じと、自分が生きてるかどうかすらあやふやな気持ちになるのは、ちょっとこじつけだけど元々の「レス・ザン・ゼロ」の感覚と近いような気もします。

 

書かれたのは80年代だけど、物語の舞台はもう少し前のニューヨーク。

登場人物や事件の名前なんかが全て色名なのが洒落てるなと思っていました。

今読むとこの頃に読んでいたアメリカ文学の空気を感じる。

映画「レザボア・ドッグス」もミスターブルーだったことなど、懐かしく思い出しました。

 

作者と一緒に町をうろうろしたり、過去の思い出話につきあってきて、結末で急にぽいっと道に放り出されるような感じ。

久々にちょっと懐かしかったです。

 

 

M「レス・ザン・ゾンビ」ダグラス・E・ウィンター

創元推理文庫

 

 


吸血鬼からのゾンビもの、良いですねえ~!
それでは私は、「レス・ザン・ゼロ」を下敷きにしたゾンビ作品を。

 

「レス・ザン・ゼロ」については、以前S様が書いてくださってますが、これもほぼそのまんま。
空虚な馬鹿騒ぎ。漠然とした閉塞感。それらをなんとなく感じてはいるものの、突き詰めて思考する事から徹頭徹尾目を背け、ひたすら受身の主人公。
読んだ後なんだかうんざりするのも同じ。

 

ただ取り上げられている音楽が、スワンズ、S・P・K、ニック・ケイブ、ジス・モータル・コイル、バウハウス、スキニー・パピー、クラン・オブ・ザイモックス(本作ではクラン・オブ・ジモックスと表記)と、オルタナティブ系なのは違うかな?

 

この作品ではゾンビは前面には出てこず、青年達の浅はかさの演出に使われる舞台装置に過ぎません。
ただ、ゾンビの不死性を、若い時の全能感/自分は永遠に生きるという錯覚に重ねているのは、うまいなと思いました。

 

 

 

S「高慢と偏見とゾンビ 」 ジェイン・オースティン、セス・グレアム=スミス 安原和見訳

二見文庫

 

この本は見つけた瞬間に買って、その時すでに映画化が決まっていたので急いで読みました。

既に色々忘れてるからさらりと読み返そうと思ったけれど、面白くてノンストップで読了。

 

原作の『自負と偏見』は若い頃に読みかけてすぐに挫折した苦い思い出があります。

十九世紀の英国文学、ジェイン・オースティン

勢い込んで読み始めたものの、複雑な恋愛心理に興味が持てなくて早々に終了。

その全く同じ話が、各シーンにゾンビが挟まってくるだけでこんなに面白くなるなんて!

 

主人公のエリザベスとその姉妹は、ゾンビとの三十五年に渡る戦いの中でも突出した勇敢な戦士。

中国の少林寺で武術の修行を積んできている。

一方、上流階級のダーシーは京都で修行した紳士でそもそも身分違いの恋愛。

2人が恋に落ちる経緯や紆余曲折は原作とほぼ変わらず。なのに原作には全くないゾンビがストーリーに自然と収まってる。おかしくて仕方ない。

 

楽しみにしていた映画は、期待以上の出来でした。

衣装もセットも格調高く、主役のリリー・ジェイムズのアクションは美しくて格好良かった。

 

ちなみに本来の原作の映画化の新しい方『プライドと偏見』(キーラ・ナイトレイ主演)も観ましたが、これも本当に良かった。

若い時には興味がなかった恋愛の機微みたいなものにも、ちょっとうっとりできました。

でもそれすら、脳内で勝手に冒険活劇とゾンビが補填されてたせいかもしれません。

そろそろオースティンも読める大人になりたいなと思います。

M「トワイライト 1  愛した人はヴァンパイア」ステファニー・メイヤー

ソニー・マガジンズ

 

過去投稿さかのぼったら本当に吸血鬼もの多くて笑ってしまったMです。
ヴァンパイア大好きな私達、次の本もヴァンパイアものです。

 

前回の「夜明けのヴァンパイア」も映画化されていますが、こちらも映画化済。
ただしS様が原作を読んでから映画を観たのとは逆で、この本については映画「トワイライト~初恋」を観てから原作を読みました。

 

アメリカでは10代の少女たちに絶大な人気があるという大ベストセラーのこの小説。
会話文が多く、地の文も平易で読みやすく、数時間で一巻読めちゃいます。

 

何よりその筋立てが!
「平凡なアタシが何故か学園の王子に見初められ…?!」です!王道です!
しかもヴァンパイアという厨二要素満載のヒーローのみならず、狼の末裔の男の子からも、クラスのモブ男子たちからも、やたらモテモテ。
美しいヒーローの美しい家族は総出で主人公を守ってくれるし、いやーこれはいたいけな少女たちが夢中になるはずですわあ。

 

基本、内向的な少女ベラと美形吸血鬼の少年エドワードとの恋愛模様が主軸なので、吸血鬼の彼に戸惑いながらも惹かれていく主人公の心理は丁寧に描かれます。
丁寧すぎるのかちょっとくどいのはご愛敬。このへんは映画の方がすっきりしてたかな。

 

ただ、転校前はデートもしたことなかった主人公ベラが、何故フォークスに来た途端やたら沢山の男の子に言い寄られるのか、(吸血鬼のヒーローを除き)明確な説明がないのは解せない…。
吸血鬼にとっていい匂いがするらしいので、エドワードがベラに惹かれるのはわかるんですが、なぜか普通の人間であるクラスの男子が何人もベラに夢中なんですよね~。うーん。
一応三巻まで読んだんですが理由はわかりませんでした。次巻以降に説明があるのかなあ。

 

それにしても、吸血鬼を映画化するのって難しいなと思いました。主にキャスティングが。
原作曰くの「人間とは思えない圧倒的美しさ」を現実の人間で再現するのって難易度高い。
そもそもヴァンパイアって総じて色白設定じゃないですか。そうなると、S様も書かれてましたが髭剃り跡がね…どうしてもね…

 

それでも沢山生まれる吸血鬼映画は、それだけ魅力ある設定なんですよね。
他のヴァンパイア映画も観てみたいと改めて思いました。

 

 

S「夜明けのヴァンパイア」 アン・ライス

早川書房

 

Mさんが「吸血鬼ドラキュラ 」が投稿されたのがワールド・ドラキュラデーでした。

ネット上でベラ・ルゴシの画像とかBAUHAUSのライブ映像を目にしたせいもあり、吸血鬼熱が冷めません。

 

この流れで「レスタト」を書こうかなと思ったのですが、過去投稿を遡ったら前にも書いていました。私たち、本当にヴァンパイア好きですね。

そこでレスタト以前のヴァンパイア・クロニクルズの1冊目、「夜明けのヴァンパイア」にします。

 

これはアン・ライスの作家デビュー作でもあります。既に本は手元にないのですが、映画化もされている有名な作品。

娘を失った悲しみから自分を癒す為に、家族にも秘密にして書き始めた話と後書きか何かで読んだ気がします。

 

 

吸血鬼の男性へのインタビューという形で、吸血鬼になった経緯やその人生が語られる物語。

主人公のルイはニューオーリンズの農場主だった男性で、その時代の町の独特な雰囲気も好きでした。

 

ルイを吸血鬼にしたレスタトはヨーロッパの貴族で、さらに古い時代の話ではヴァンパイアの地下組織だったり、素性を隠して劇場を運営していたり、古いゴシックホラーからそのまま現代にまで生きてきた歴史が描かれているのも楽しい。

吸血鬼同士の人間(?)関係が結構複雑で、反目があったり恋愛がこじれたり、社会性が必要なのは吸血鬼界も同じ。

 

たまたま書店で手に取って夢中になったのですが、映画化が発表された時にはキャストに驚きました。

ルイがブラッド・ピット。レスタトがトム・クルーズ。アルマンがアントニオ・バンデラス

私の持っていたダークで退廃的なイメージと全く違っていて、期待できないなと思いました。

 

この作品が好きな方も多いと思うし、今観返したらそんなに違和感ないのかもしれないけれど。

その時はあまりに好きな作品だったので、本当にがっかりしてしまった。

ハリウッド的なイメージが強すぎたし、白塗りにしても人間にしか見えなかった(私にはね)。

バンデラスの髭剃り跡が青くて、そんなヴァンパイアはいない!と思ったのを今でも覚えてる。

 

記者役のクリスチャン・スレーターだけはイメージ通りでした。人間役だからね。

ルイの話に魅了されながらも、夜の部屋に2人きりでいることに恐怖も覚えている。

冷たくて美しい夜の世界とは異質の、生々しい(美味しそうな)人間である感じがとても出ていて、ぴったりだなと思いました。

 

ゴシックで耽美でインディーズ的なものが、いかにもなハリウッド作になってしまって残念な気持ちだったのかもしれない。

ヨーロッパ系の映画に出ている俳優さんだとまた印象が違ったのかもしれません。

 

 

このシリーズの世界観が好きで、ライスの他のシリーズ「マミー」とか後年の官能小説なんかも追って読んでいました。

またシリーズを集め直して読んでみようかな。

ロックスターにまでなってしまうレスタトにまた会いたくなってきました。

M「吸血鬼ドラキュラ」ブラム・ストーカー

東京創元社

 

 

なんとS様の「吸血鬼を救いにいこう」が上がる数週間前にたまたま読了し映画まで観ていました。偶然~!!
というわけでブラム・ストーカーの「吸血鬼ドラキュラ」です!

 

1897年の作品ということで、一世紀以上前だし退屈かなと危ぶんでいましたが、なかなか面白かったです。
しかし長い!そして回りくどい(笑)

 

「吸血鬼を救いにいこう」はレポート的語り口とのことでしたが、こちらは書簡体小説
複数人の日記や手紙や新聞記事で構成されているのは楽しいものの、ジョナサン・ハーカー回が終わってからは延々恋愛模様が続くので「何を読まされてるんや…」という気持ちに。ドラキュラ!ドラキュラを持てい!!

 

ちょっと驚いたのがその男女観。
「彼女が大きな危険を冒すのはよくないことだ―この行為は女性の役目ではない」「女性というものには、男性が男らしさを損なうことなく、打ちひしがれ、優しい気持ちや感情を表現できるような何かがあるのだろう」「男性とはこんなに真剣で、真実で、勇敢なのだから、女性が男性を愛するのは至極当然のことだろう!」
姫と騎士ですねえ。えっ100年前ってそんな感じ…?
イギリスで年齢制限無しに女性参政権が認められたのが1928年だからこんなものなのか…?

 

あと当時発表されたばかりの「犯罪者の脳は未発達」という学説を取り入れていて、1897年としてはなかなか最先端だったのではないかと思いました。ロンブローゾ!

 

ドラキュラが止めを刺されるところは超あっさりで拍子抜け。「吸血鬼カーミラ」もそうだったな…

 

冒頭、ドラキュラ伯爵の城に向かう若者に村人たちが口々に祈りを唱え十字を切るところは否が応でも雰囲気が高まりますし、その城で軟禁された挙句三人の女性に寝込みを襲われるところもなかなか耽美。
しかしなんといっても出色は、皆の憧れの女性ルーシーが吸血鬼になり深夜の墓地に現れ、血まみれの唇で婚約者を誘惑するところでしょうか。
そのシーンが一番好きです。幻想的で素敵でした。