M「こまどり」ゴア・ヴィダール

「新・幻想と怪奇」仁賀克雄編所収

Hayakawa pocket mystery books

 


S様の「ある小さなスズメの記録」の『小鳥』『ウォルター・デ・ラ・メア』で思い浮かんだのがこの作品。
幻想怪奇のアンソロジーに載っていた短編ですが、
怖いというよりは心痛む感じです。

 

「九歳のときのぼくは、いまよりはるかにタフだった」で始まるこの掌編。
そのタフさが、交通事故や覗きからくり、安雑誌の拷問場面に興奮する、というのが可愛い。
某マンガ*1に少年がクラスメートの女子をギタギタに切る想像をするコマがあるのですが、この作品でも、厳しい女教師を“自分の世界で発明したさまざまな拷問”でやっつけるのを想像する場面が出てきて、『思春期あるあるなんだな…』と感じて微笑ましかったです。

 

タイトル「こまどり」が登場するのは後半5分の4を過ぎてから。
それまでは、ジョージ王朝風のカントリーハウスの小学校や隣接した森で過ごした少年の日々が綴られています。
それがとっても繊細で透明で美しい。
ラストは少年たちの残酷な純粋さに、胸が締め付けられました。
「同時代の作家トルーマン・カポーティが彼をライバル視した」というのも納得の一篇です。

 

 

 

*1:「僕の心のヤバイやつ」という漫画です。お気に入り