M「ロリの静かな部屋」ロリ・シラー&アマンダ・ベネット

早川書房

 

「美しい鳥つながりから、暗くて妖しい所へ」っていいですねえ。暗くて妖しい世界大好き!
このまま幻想の世界に行こうかな~とも思ったんですが、
「現実と妄想の境目があいまいになる。自分は現実だと思っているのに、誰も信じてくれない」の一節にどうにも心惹かれたので、「少女」との合わせ技でこちらの本です。

 

副題「分裂病*1に囚われた少女の記録」
統合失調症を発症した17歳の少女ロリが、何とか社会生活を営めるようになるまでを
本人・家族・友人・医者による手記で綴った本です。

 

これロリ本人が、幻聴や妄想で狂気に至っていく過程を書いているんですけど、これがもう生々しくて痛々しくて怖ろしい。
繰り返し頭の奥で響く「こいよ、あばずれ。俺と一緒に地獄へこい」と囁く声。ヒイ……!

 

でも決して感情的じゃないんです。むしろ客観的で細やかで時にはユーモアを滲ませた筆致。頭が良い人なんだなと感じます。

 

実際彼女は中流の上のWASPで、小さい頃から優秀な良い子。両親は期待ゆえか、常に彼女を叱咤激励します。
統合失調症を発症してもそれは続いて、父親は昔の彼女のイメージを捨てきれず我が子の現実を受け入れられません。

 

けれどロリは「過去の自分にはもう戻れない」ことを認め、受け入れます。
そして「それでいい。自分は前に進む」と決意するのです。

 

他にも閉鎖病棟保護室の様子、24時間監視され、靴と服を取り上げられ、並んで薬を受け取り目の前で飲み下す手順なども描かれ、とても興味深く読みました。

 

読み応えありです!

 

 

*1:1995年出版です。(日本で「精神分裂病」が「統合失調症」と呼称変更されたのは2002年)