M「路上」ジャック・ケルアック   

河出文庫


「古典」で「主人公が放浪している」もの、というわけでこれを。
ビート世代のバイブルとなったこの作品の中で主人公は、ヒッチハイクをしながらアメリカ大陸を何度も横断し、様々な人と出会います。奇矯な人物もいるしそれなりに事件もおこり躍動もしているのですが、どれもその時だけの一過性の感じで、いきあたりばったりでふにゃふにゃと曖昧で、だから青春ぽいともいえるかもしれません。
これが書かれた1950年代のアメリカは戦後の豊かな時代です。ビート世代やヒッピーの人たちは、その不自由のない生活に幻滅して、与えられた希望ではない違う世界を見つけるため放浪の旅に出たそうで、なるほど、そんな時代の“気分”は、うまく写しとられているかもしれないな、と思いました。