S「放浪記」林芙美子

SandM2005-03-21

新潮文庫


生まれながらに故郷はなく、放浪を重ねる日々。工場でアルバイトをしながら(大正時代に!)女学校に通う。カフェーの女給や事務員、女中、行商、就いた職種も多種多様だ。向っ気の強さと可愛らしさが同居した不思議な魅力に参ってしまう。どんなにしたたかになっても、感情の繊細さは失っていないことが奇跡的!こんなに捨て身になっても、自分まで失う事はないのだ。私にも芙美子と同じ種類の強さと弱さが少しずつならある。そう思うと、怖いものがひとつなくなる気がする。