M「夜にめざめて:ある娼婦の告白」ジャクリーン・ウォード

SandM2005-03-19

青弓社


こちらはロンドンの、元プロの娼婦だった著者によるノンフィクションです。
世界最古の職業の一つである「娼婦」は、一般に社会的には“穢れたもの”“侮蔑の対象”とされることが多いように思うのですが、私自身は決してそうは思いません。
しかしここに出てくる何人かの娼婦を見ていると辛くなりました。彼女たちは、そもそも自立するための金を手にする手段として娼婦を始めたはずなのに、いつの間にか自分で考える力もなくしていきます。そして最低限のプライドもなくし、自分を搾取するヒモに自ら縋っていってしまいます。金銭との等価交換の対象が自らの体だというにすぎないビジネスだったはずなのに、体を売り買いの対象とすることで感じてしまう「周りに対する嫌悪感」や「孤独感」が描き込まれていて、色々考え込みながら読みました。
著者自身は、苛酷な体験の後、娼婦とは違う道を見つけていくのですが、これはなかなか例外ではないかなあと思いました。