2005-03-01から1ヶ月間の記事一覧

S「きもの」幸田文

新潮文庫 主人公るつ子の青春時代を、様々なきものを通して描いている。パリッと糊のきいた木綿の浴衣、シャキッとした銘仙、肌にしっとり重くなじむちりめん、なぜか肌がかゆくなってしまうモスリン。まるで自分が身に纏っているように感じられる感覚描写が…

M「嵐が丘」エミリー・ブロンテ  

岩波文庫 この交歓日記をはじめてから、「むかーし読んだ本、今読んだらどう感じるかなあ」と思い出す本がいくつかあって、この本もその一つです。とっても有名な、ヒースクリフとキャサリンの激しい愛の物語。エミリー・ブロンテの姉シャーロット・ブロンテ…

S「シンデレラ迷宮」氷室冴子

コバルト文庫 「森を出るべきでなかった」という一文が象徴的な、外の世界への旅立ちを描いた小説。少女が目を覚ますと、周囲を様々な女達が取り囲んでいた。リネという名前の他は記憶を失ったまま女性達の家を順に訪ねるうち、思い出したくない記憶が少しず…

S「羊たちの沈黙」トマス・ハリス

新潮文庫 カニバリズム、しかも美食家とくればハンニバル・レクター博士を思い出す。映画での天井から翼を広げたように吊された死体(美しかった)や飛び交う蛾(本当に嫌だった)の映像が強く印象に残っているけれど、原作もとても面白い。読み進むうちに、…

M「食物連鎖」ジェフ・ニコルスン  

早川書房 これはなかなか面白かったです。外食チェーン経営者の息子である主人公は、会員制の「永遠倶楽部」に招待されます。ところがそこへ向かう車中では目隠しをされ、着いた倶楽部で目隠しを取ると、食卓の中心には女体盛りが供されています。 そんな本…

M「私たちがやったこと」レベッカ・ブラウン

マガジンハウス 『皮膚が変貌することで、自分が自分でなくなるような不安感を覚える』うんうん、そうですよねー。では今日は逆に、確信を持って自ら身体を傷つけることで、相手にとっての自分の存在を確かにしようとしたカップルのお話を。 ある日、「わた…

S「きりぎりす」太宰治

新潮文庫 皮膚と精神の関係を考える時、必ず思い出すのがこの本に収録されている「皮膚と心」。 ある初夏の日、三月に結婚したばかりの女性の身体に、赤い石榴のような吹き出物ができる。独り語りが秀逸である。「もう二十八でございますもの。こんな、おた…

M「皮膚−自我」ディディエ・アンジュー

言叢社 皮膚の損傷は身体や「自我」の境界線を維持し、 無傷のまとまった存在であるとの感情を再建するための劇的な試みである。 皮膚は外界に接する一番外側の器官です。接触感や音や温度、嗅い、味覚、苦痛などを感じる外被であり、「わたし」という自我を…

S「『気』で観る人体 経絡とツボのネットワーク」池上正治

講談社現代新書 人間の身体には「気」が流れるルート「経絡」がある。大きな幹線道路と支線があるように、その道はひとつではない。この本は人体の道路地図のようなもの。道の名前と、どこからどこを通っているかが書かれている。 「このツボを圧すと○○に良…

S「魍魎の匣」京極夏彦

講談社文庫早ぁっ!もう読んだのですか!お気に召したなら、お話はまだまだ続くのでしばらく楽しんで頂けそうよ。私は夏が苦手なので「姑獲鳥の夏」はちょっと息苦しくて辛かったかな。取り憑かれたようになって読んだのは、この2作目の「魍魎の匣」。 これ…

M「姑獲鳥の夏」京極夏彦

講談社文庫 昨日お借りしたばかりのこの本、ちょっと目を通すだけのつもりが、なかなか面白くて一気に読んでしまいました。冒頭「古本屋にして憑物落とし!」な京極堂主人の薀蓄が語られ、続いて「良からぬ噂のある病院の娘婿が失踪、その妻は妊娠して19ヶ月…

S「江戸むらさき特急」ほりのぶゆき

小学館 時代劇のパロディ漫画。私は時代劇が好きで、子供の頃から欠かさず見ている番組と言えば時代劇と天気予報だった。 ほとんどが4コマ漫画になっていて、たまに長編もある。銭形平次は銭フェチで、暴れん坊将軍は『暴れは一日一回』と決められている。…

M「セケン・ムナサンヨー」いとうせいこう  

角川書店 井原西鶴『世間胸算用』は、歳末をくぐりぬけようとする庶民の知恵を描いた元禄時代の作品です。それを英訳したDAVID C.STUBBS+MASANORI TAKATSUKAの『This Scheming World』を更にいとうせいこうが翻訳、という訳で、これは英国人が訳した西鶴を直…

S「高丘親王航海記」澁澤龍彦

文春文庫 高丘親王は嵯峨天皇の皇太子。政治紛争の結果、皇太子位を廃せられて入定する。幼い頃に父天皇と親しかった藤原薬子に聞いた天竺のエキゾティシズムに心を奪われて、唐土・広州から天竺への不思議ツアーが始まる。60代になった親王は、お供に2人…

M「踊るカメラマン」板垣真理子

晶文社 モロッコまで来たので、ついでに?アフリカ全体へ行ってみます。 アフリカに魅せられた女性写真家が経験した色々なことが書かれています。鼓童のアフリカツアーに同行したり、“チンプ(チンパンジー)”を撮ったり、マラリアにかかったり、自らのこと…

M「精霊と結婚した男」ヴィンセント・クラパンザーノ 

紀伊國屋書店 でわでわ私はメキシコからモロッコへ飛んでみますねっ。 モロッコ人トゥハーミさんてば、ジンニーヤさんっていう精霊と結婚してたんですって。ジンニーヤさんは別名アイシャ・カンディーシャと呼ばれる女の魔物です。これはトゥハーミのライフ…

S「マヤ文字を解く」八杉佳穂

中央公論新社 私はすっかり旅行ムードになってしまったので、このままメキシコ方面へ飛びますよ。 マヤ文明とかマヤ暦とか古代遺跡などと聞いただけで笑顔になってしまう。マヤ文字というのは石にぎっしり彫り込まれた装飾的な文字。ひとつひとつが人間の顔…

S「不可触民 もうひとつのインド」山際素男

光文社 同じく海外ルポだけど、これは読めば読むほど考え込んでしまう。インド社会の根元にあるカースト制度の中で、最下層とされるアンタッチャブル(不可触民)の実情を都会から田舎まで果敢に取材した本。インド人口の4分の1が今も差別され、辱められ、…

M「アメリカのゲイ社会を行く」エドマンド・ホワイト

勁草書房 なんとなく海外ルポもの(?)づいているので今日はこれを。これはなかなか読み応えあります。70年代アメリカ全土を地域ごとに訪ね、ご当地ゲイ事情をレポしたもので、場所はLAからサンフランシスコからテキサスからニューヨークから。内容も町の…

M「アジアの屋台でごちそうさま」浜井 幸子

情報センター出版局 私は旅に行くならガイドブックチェック派です。♪だって、こーわいのよ〜♪小心者なのです〜。その割に現地では勢いで行動するので、全然慎重派ではないのですが(トホホ)。なかなか実際には行けない分、ガイドブックや旅行/留学記を読む…

S「好きになっちゃったカトマンズ」下川祐治

双葉社 5年ほど前にネパールとチベットに行った。私はガイドブックをほぼ読まない派なのだけど、これは面白くて旅先にも持って行った。ガイドブックというよりはエッセイ集のようで、読み物としても充分面白い。おかわり自由のネパール式定食「ダルバート」…

S「ミーシャたちの素顔」

朝日新聞社 ロシアものが確かあったはず、と書棚をガサガサ探して発掘。1991年(またもや!)に開催された写真展の図録。1985年にゴルバチョフ政権が誕生してから、「ペレストロイカ(立て直し)」という言葉が聞かれるようになり、「グラスノスチ(情報公開…

M「ロシアン・ルーレット」今枝弘一  

新潮社 もいっちょ1991年前後のロシアを伝える本(写真集と言った方がいいのかな)を。これはかなり衝撃的でした。SSSR崩壊当時の様子を沢山の写真で紹介しているのですが、アフガン帰りの「アフガンツィー」、難民、エイズ患者、女囚、“血の日曜日”の現…

M「約束の地の奴隷」アレクサンドル・ドーリン  

中央公論社 28日の本と同じく1991年に出版された本ですが、こちらは俯瞰ではなく地べたの視点で、当時のロシア人の生活を克明に記しています。出てくるのは、マフィア・盗み・たかり・万引き・ちょろまかし・賄賂。アル中がとても多くて、でもバーがない為、…