M「私たちがやったこと」レベッカ・ブラウン

マガジンハウス 


『皮膚が変貌することで、自分が自分でなくなるような不安感を覚える』うんうん、そうですよねー。では今日は逆に、確信を持って自ら身体を傷つけることで、相手にとっての自分の存在を確かにしようとしたカップルのお話を。
ある日、「わたし」は耳の中を焼き、「あなた」は目をつぶします。そうすれば、「わたし」は、音楽家である「あなた」の目になり、「あなた」は、画家である「わたし」の耳となって、お互い不可欠な存在となり、常に二人でいるようになるはずだと、考えたからです。そうして不具を周りから隠し、否応なく依存しあうことで、二人だけの共同体となろうとします。永遠にお互いを必要とする関係を必死で望むあまりに、健全な器官を潰すこの二人の姿は、あまりにも愚かかもしれません。ラストは残酷な卑俗さです。けれど私は、かすかな齟齬を生じさせながらもぎこちなく小さな世界に閉じこもる二人に、何故かぼんやりと憧れを抱きながら読みました。