「ドラキュラ ドラキュラ 吸血鬼小説集」収録 種村季弘 編 河出文庫
Mさんの「蛇岩」の呪われた一族というパワーワードに、怪奇小説愛を呼び覚まされました。
ということで吸血鬼ですが、吸血鬼は実は血縁じゃないですね。
お互いの血を飲むという儀式を介して増えるので血が混ざってることは間違いないけれど、家系的なものではありません。
このお話は吸血鬼小説を集めたアンソロジーの中に収録されている、2ページだけの短いお話。
異国の娘に心を奪われた吸血鬼が、彼女を追って生まれ故郷を離れて異国の地へ行きます。
自分の棺を抱えて「外吸歓協(外国吸血鬼歓迎協会)」を訪れ、暮らしやすいように万事整えてもらったにも関わらず、どんどん衰弱して行きもはや死を待つのみ。
仲間達はなんとか救おうとするけれど、おそらく悲しい運命は避けられないそうにない。
その理由は、彼は吸血鬼の中でもほぼ皆無の、第六血液型に属していたから。
人間の血液型が4種類で、一般的吸血鬼が2種類っていうことでしょうか。
「外吸歓協」以外に「赤輪」の看護師など、世界的に吸血鬼コミュニティやネットワークがあるようで、そこで働く吸血鬼達のことを想像したらちょっとほほえましい。
レポート的な語り口も面白い。
種村氏の編集解説によると、ベレンという人はシュルレアリスムの謎めいた女流詩人で、マンディアルグの激勝を買って文壇に登場。
アンドレ・ブルトン晩年の恋人であったとも言われているそうで、肖像写真は常に右腕だけ。
作品よりも作者が気になってくるパターン。