S「高丘親王航海記」澁澤龍彦

文春文庫


高丘親王嵯峨天皇の皇太子。政治紛争の結果、皇太子位を廃せられて入定する。幼い頃に父天皇と親しかった藤原薬子に聞いた天竺のエキゾティシズムに心を奪われて、唐土・広州から天竺への不思議ツアーが始まる。60代になった親王は、お供に2人の僧と一人の少年(実は少女)を伴って船出する。南国のむっとした空気、ジュゴンや下半身が鳥の姿の女、犬の頭を持つ人々が次々に旅を彩る。仏教説話のパロディのようでもある怪異と幻想奇譚だが、南国らしい開放感と明るさがあってとても好き。