M「セケン・ムナサンヨー」いとうせいこう  

角川書店


井原西鶴世間胸算用』は、歳末をくぐりぬけようとする庶民の知恵を描いた元禄時代の作品です。それを英訳したDAVID C.STUBBS+MASANORI TAKATSUKAの『This Scheming World』を更にいとうせいこうが翻訳、という訳で、これは英国人が訳した西鶴を直訳するという試みですね。外人が見たサイカクは、コンパル流派とかシュサカの田舎道とか、摩訶不思議な用語頻出です。それはそれで面白いのですが、いとうせいこうが意図するところの、「翻訳をすることで本来のテクストからずれていき、どこにもないサイカクの世界が出現する」というところまでは感じられませんでした…。サイカクを知っている人が直訳することで、かえって中途半端な世界になったのかもしれないですね。ちょっと残念でした。