S「不可触民 もうひとつのインド」山際素男

光文社


同じく海外ルポだけど、これは読めば読むほど考え込んでしまう。インド社会の根元にあるカースト制度の中で、最下層とされるアンタッチャブル(不可触民)の実情を都会から田舎まで果敢に取材した本。インド人口の4分の1が今も差別され、辱められ、殺されている。根深く残る“浄・不浄”の概念。“浄”を存在させる為、カーストに押し込められる“不浄”の人々。気高い精神と裏腹な残酷さを始めとして、ここでは何もかもが両儀的でとらえ所がない。破壊と創造を繰り返す神様が治めている国の暗く深い底を見る思いがする。