M「遊び相手」A・M・バレイジ  

早川書房

★ネタばれしてます!

冷静に読んだらきっとたくさん穴があったり歪だったりするんだろうなあって思いながら、どうしてもどうしても、弱い作品というのがあって、これもそんな沢山あるうちの一つです。
初老の独身男性エバートンが、縁もゆかりもない女の子モニカを引き取るところからお話は始まります。エバートンは「生来冷血動物で、独身、規則正しく節度ある生活を身につけ、いくらか気難しく、静かで質素な生活を好」む、まあちょっと変わり者。現代っ子が大嫌いな彼はモニカを独自のやり方で躾けようとし、モニカも滅多に泣かず笑わぬ愛嬌のない静かな子供に育ちます。それが田舎の家に引っ越した頃から段々と彼女に変化が出てきます。楽しげになります。どうやらモニカに「遊び相手」が出来たらしいのですが、どうもよくわかりません。
有り体に言ってしまえば幽霊物語でして、ネタもすぐわかってしまいますし、格段ゾッとするというわけでもありません。けれど、幽霊たちの心優しさ、そして芽生えはじめたモニカへの愛情に気づきながら、彼女自身のためを思ってあえてモニカを手放すエバートンが、そっと幽霊たちに囁きかける言葉。

「こわがらないでおくれ」とエバートンは小さな声で言った。
「わたしはただの寂しいおじさんだ。モニカが行ってしまったら、わたしのところへ来ておくれ」

この言葉を読むたびに、ただの寂しいおばさんである私は、恥ずかしいほどに泣いてしまうのです。