M「アメリカン・サイコ」ブレット・イーストン・エリス

SandM2005-03-17

角川書店


読みながら、思わずうわあああと言ってしまいました。主人公は、ウォール街で働くエリートビジネスマン、パトリック。冒頭より延々と語られるのは、「ステレオについて」「ファッションについて」「ヒップな店について」の自慢の応酬と、ひたすら行われるエグイ殺人です。その両方が並列に語られて、それもやたら細かく、ブランド名なんか、もうこれでもかと言わんばかりに何十行も羅列されます。
筋といえばひたすら、パトリックがどんなに金持ちでスノッブ野郎で小心か、というのをタラタラ書いてるだけですし、登場人物にしても、主人公の性格が途中で説得力もなく変わってたり意味ありげに登場した人物が途中で消えてしまったりと、どうも首尾一貫していない…と、普通なら個人的には全く嫌いなタイプの作品なのですが、けれどでも!息もつかさず読まされました。だってわかるんですもの。このダラダラと羅列される中で、だんだんと見えてくる、パトリックの閉塞感空虚感が、意味のない破壊衝動が。それはもう原因もきっかけも既に曖昧で、ただもう殺すのみ、消費するのみ、なのです。それが読み進むうちに身に迫ってきて、自分の抱える暗闇をみせつけられ、ハアと溜息がでました。読み終わってカタルシスが得られるわけでもないですし、声高に何を主張しているわけでもないのですが、かなり強く印象に残った作品です。