M「スミラの雪の感覚」ペーター・ホゥ  

SandM2005-04-04

新潮社
  

昨日の文章を書いていてこの本を思い出しました。コペンハーゲンを舞台にした海洋冒険ミステリーなのですが、私は筋立てよりも、そこに登場する人物たちに惹かれました。
イヌイットを母に持ち雪と孤独を愛する37才独身女性の主人公スミラ、クッキーの型焼きに一家言もつスミラの友人リュービング、どれも「ずっと一人で暮して、一風変わった趣味を磨きあげている人々」です。中でも、スミラと冒険を共にする機械工はかんなりワンダフル。彼は吃音で失読症なのですが、見事なコーヒーを入れ素晴らしいオムレツを作るのです。頭の中で理屈をこねくりまわすばかりで実生活では役に立たない私は、「彼のような人間になりたかったのに何処で間違ってしまったのだろう」と悲しく思いながら読みました。
お話自体は、独特なスミラの視点とどんどん転がる展開で、前半はとても面白かったのですが、後半はストーリーの展開上かスミラが大男相手に立ち回りだして、彼女の感じ方考え方が描かれなくなったのが、私的にはちょっと残念だったです。