S「異端の肖像」澁澤龍彦

河出文庫


ジル・ド・レエやヘリオガバルス、モンテスキウ等、ヨーロッパ史上独特な7人の異才について語られている。
バヴァリアの狂王と言われたルードヴィヒ2世もお気に入りの城を作ってそこで暮らした人。幻想的な雰囲気を愛した王は洞窟の部屋や、ヴェルサイユ宮殿の模倣の様な部屋等、様々な演劇的な空間を作った。熱狂的にワグナーを愛した彼は、夜になると中世の騎士の服装で各部屋の壁画の前をさまよい歩いた。トリスタンやローエングリンの物語の登場人物になったつもりで。ヴィスコンティの映画で自慢げに王が指し示す白鳥のボートは安っぽく神秘的な雰囲気は感じられない。豪奢な造りであっただろうと想像はするけれど、カラオケボックスの『中世風の部屋』(あるのかなぁ)位にしか見えないのではないだろうか。幻想の中にある美しい物を現実に引き出すなんて台無しだ。それもわかってやってたんだろうな、と痛ましく思った。