S「夢日記」島尾敏雄

SandM2005-02-21

河出書房新社


ここにも夢独特の時間が流れている。昼間の意識と違う目で見える現実と非現実。妻ミホや子供達と共に暮らした現実の時間に加えて、夢の日常でも家族との思い出があるのだ。もういない人達との生活がこの世界では続いており、現実とよく似ているけれど少しずれた別の人生がある。不安や懐かしさや自責の念を感じる夢もあるが、山羊が話したり見たこともない世界が出てきたり、とりとめのない夢は楽しい。外からは見えない豊かな内的世界が、数年にわたって記録されている。