M「ガルシア=マルケス全短編集」

創土社


うはー、ガブリエル・ガルシア=マルケス!「オメーの生涯の100冊あげやがれ」と言われたら、まず確実に入ってくるであろう作家です。
で、「え〜っえ〜っどどどれにしようううう」と思ったのですが、やはりここはひとつ短編集をあげてみます。「全短編集」と銘打ってはいますが1982年までに発表された分なので結構古く、やっぱり初期は硬いし抽象的すぎるし死のテーマを押し出しすぎて読みにくいのですが、そこを我慢して読み進めていくと段々よくなっていきます。私が良いなあと思ったのは、海底にある死人の村の、七つの海の植物を従えた美しい女の死体が印象的な「失われた時代の海」、とか、見えない眼で全てを見通す祖母の存在感が圧倒的な「造花の薔薇」とか。とかとか。
しかしなんといってもこの短編集の白眉は「純真なエレンディラと非情な祖母の信じ難くも悲惨な物語」でしょう!家を焼いてしまったエレンディアが、その罰として祖母に言われるまま春をひさぎながらキャラバンで旅をする物語。「百年の孤独」のアウレリャーノ・ブエンディーア少年もからんできます。この短編が好きな人は「百年の孤独」も大丈夫だと思います。
マルケスで好きなのは、土と汗と血の匂いが沸き立ってくるところ。それがありえない出来事で形作られているところ。夢か現か真か嘘か、「ここではない何処か」に連れて行ってくれる作家の一人です。とはいえ近作は(といっても言うほど読んでませんが)、ルポルタージュ的手法に傾いているのが多く見受けられ、短編も洗練されているのですが泥臭さが足りなくて淋しいです。


あう〜また長くなってしまった…。画像はマルケス本人です。ちょっちヤな面構えですね。そういえばレイナルド・アレナスは彼を、体制におもねる日和見主義者として蛇蝎の如く嫌ってたな。