S「青い犬の目」ガルシア=マルケス

SandM2005-02-20

福武書店


副題は「死をめぐる11の短編」。あからさまに死が登場しない話もあるが、どの人生も刻一刻と死に向かっているのだから、死と切り離された小説はないのだとも思う。
「青い犬の目」の閉じて安定した雰囲気が好きだ。夢の時間は別の言語や規律が支配しているので、起きている時間の言葉で再現するのはとても難しい。夢の中では確かだった物が、目覚めるとぼんやりとしたイメージに変化してしまう。簡単な言葉が深い意味を示しているように思え、小さな身振りだけで気持ちが伝えられる。それが当然のように感じられていたはずなのに、覚醒した途端に神経は白々と冴えてしまう。このお話ではそんな夢の時間が流れていて、不思議な懐かしさを覚える。