M「きみの血を」シオドア・スタージョン    

ハヤカワ文庫NV


では、一風変わった吸血鬼ものを。ああでも、これって吸血鬼ものって言えるのかしらん。とっても説明しにくいです。
とある米軍駐屯地で、ある兵士が彼の異常な手紙について訊問されます。激昂した兵士はコップを握り潰しちゃうのですが、破片で傷ついた自分の手から流れる血を見た途端、彼はいきなりそれを吸いはじめちゃうんです。兵士が書いた自らの半生の回想録や軍医と少佐の往復書簡や心理分析で、その行動の原因を探っていくのですが、ん〜なんかヘン。どっかおかしい。回想録に欠落があるらしいし、そもそも誰が書いているのかもあやふやになってくる。もうもう一気に読みました。ラストには呆然。
でも説明しにくいのです。なんというか、すごく独特。「吸血鬼もの」とも読めるし「サイコスリラー」とも「ミステリー」とも読めるんですけど、う〜ん、なんとなく私はそれらと共に、『ひどく孤独な人間が、必死になって愛(らしきもの)を求めている姿』を強く感じました。画像はハヤカワ文庫のものですが、私が初めて読んだのはハヤカワ・ポケット・ミステリ・ブックです。当時ポケミスを片っぱしから読んでいた私は、これも推理小説かなって軽〜い気持ちで手に取ったのですが、いやーもうヤられました。これでスタージョンにハマりました。「ビアンカの手」(これもいつか書きたい!)と並んで特別な作品です。