M「巡礼」マッシモ・ボンテンペッリ

図書刊行会


街に一人の知り合いもなくピアノと数十冊の本を友に暮していた青年は、ある夕暮れ、不思議な人々の列を窓からみかけます。ひたすら歩き続ける人々、時たま歌われる合唱。青年は何故かその行列に加わって、人々と共に歩き続けるうちに森に入ってゆきます。不思議な物語なのですが、なぜかひしひしと胸に感じて、私は「歩いてゆくのだ私たちは。行き先もわからずに」ということを想いながら読みました。
“空の天使”がのぼってゆくシーンは美しく、そしてなんといっても終わり方が素晴らしいです。もうめちゃめちゃ納得で、その最後に漂う一抹の侘しさにこころが詰まります。