S「高野聖・眉かくしの霊」泉鏡花

SandM2005-04-07

岩波文庫


旅籠の夜、旅の僧が語る怪異譚。大蛇や蛭で難儀な山中を越えて僧が出逢ったのは、峠のあばら屋に暮らす美女。かつて彼女を愛した男達を蛇や蛙や牛馬に変えて侍らせ、腰の抜けた口も利けぬ幼い亭主を世話する。優しさの中に強みのある、気軽に見えて落ち着きがある、あらゆる二面性を持った魔性の女。高野聖の語る魑魅魍魎の女王様は凄味があり可愛らしくもある。きめ細かい肌の色や、花のような香りまでが伝わってくる。これも黙読&音読で2度美味しい作品。