M「ダーティ・ホワイト・ボーイズ」スティーヴン・ハンター  

SandM2005-04-05

芙桑社  


読み出したら止まらない、悪党三人の逃走劇。中心となるのは“刑務所一のデカイ一物をもつ白人”ラマー・パイです。ラマーは馬鹿力でちょっと頭の足りないイトコ、入ったばかりの気の弱い元美術教師を誘い、三人で重犯刑務所を脱走します。追うのは悩める警官バド・ピューティ。彼は若い同僚の妻と不倫しています。
追いかける側の警官が肉欲に溺れながらも罪の意識にびくびくしているのに対し、逃げる側のラマーのあっけらかんとしてること!強盗し殺人しながら、その迷いのない悪党ぶり、ラマーのキャラクターが強烈で思わず「かっこいいよーラマー!」と叫んでしまいます。未成年時に両親を殺害した女の家に転がり込んでからは、「とうちゃん」「かあちゃん」と呼び合い、ラマーは「とうちゃん」として他の三人を守ろうとし、三人はラマーを励まそうとビックリパーティを計画したりして、まるで一つの家族のようになります。警官という正義の側ですが、愛人に溺れて息子の約束すっぽしてしまうバドときれいに対照的。
元々は軍事アクション作家らしく、銃撃戦は迫力あるし、デニーズ襲撃の際のラマーの読みや、逃げる算段の見事さ、3人が刑務所に残していった私物から読み取れる其々の性格、などなどもうまい具合に挿入されていて、もうノンストップ。ラストも良くて、最後まで気持ちよく読み終わりました。