M「ポルトガル文ーマリアンナ・アルコフォラドの手紙」リルケ訳

筑摩書房


手紙の一つに「恋文」ってありますよね。そして「恋文」で、私が真っ先に思い出してしまうのがこの一編。これはある尼僧が、恋焦がれた相手に出した手紙を、リルケが訳したものなのですが、もうヒシヒシと、彼女の愛情熱情が表れていて、非常に強いものを感じました。
この一編は、ちくま文学の森『美しい恋の物語』に所収されていまして、他に名を連ねるのは、島崎藤村堀辰雄伊藤左千夫・ヘッセ・モーパッサンなどなど、もう世界的に有名な、名だたる小説家さんたちばかりです。どの作品も良かったのですが、なぜか私は、名もない一人の女性がしたためたこの文章が、驚くほど一番胸に迫りました。彼女の相手に対する、愛しさ憎らしさが、どうしようもなく溢れていて、たまりませんでした。ほんと「恋文」です。