S「悪童日記」アゴタ・クリストフ

早川書房


戦争中の東欧、国境近くの“小さな町”で魔女と呼ばれる祖母と暮らす双子の少年の話。空腹に耐える鍛錬、ひどい言葉を浴びせあう精神の鍛錬をし、ふたりだけでの勉強や、殺すことに慣れるために毎週動物を殺す。弁護士そこのけの明晰な言葉を操り、カミソリを持ち歩く天才不良少年。彼らのしたたかさはクール!というより他ない。この奇跡のような双子が強く生き抜く物語は、生きられなかった無力な子供達の沈黙の物語と対になっているのだと思う。