M「死の姉妹」グリーンバーグ&ハムリー編

扶桑社ミステリー



ヴァンパイアをテーマにしたアンソロジー。アンソロジーというのは、とかく玉石混交になりがちですが、これは中々当たりでした。
そのうちいくつかについて覚書。


・「からっぽ」M・ジョン・ハリスン 話自体はちょい消化不良だったけど、バスルームの両親の描写が静かに迫力。
・「マードリン」バーバラ・ハムリー 編者でもあるハムリーの作品、これは良かった!殺した相手の声につきまとわれるヴァンパイア。ラスト墓場のシーンも静謐な哀しみがじんと心に沁みる。
・「ママ」スティーヴ&メラニー・テム ヴァンパイアになった母と弟と死人の父が、同じ家に居る様子が、じわじわ嫌な雰囲気。
・「貴夫人」タニス・リー 誌的。船を女にヴァンパイアに見立ててる。絵画的でもある。ラスト船の色が海に吸い込まれるところなんて特に。
・「受け継いだ血」マイケル・クーランド ヴァンパイアの少年が大人になるまで。なんてことないが安心して読めた。
・「マリードと血の嗅跡」ジョージ・アレック・エフィンジャー SF的道具立て、だけどイマイチ生かされてない気が。「電脳ハードボイルド」シリーズの一編らしい。
・「ダークハウス」ニーナ・キリキ・ホフマン これは良かった!子供を亡くした女たちが集まる家、彼女達は代わる代わる歳を取らない吸血鬼の娘に生気を与える、という設定がまず新鮮。そこで女たちが交わす会話から、じわじわと彼女たちの過去・子供をなくした哀しみなどが露になる。ラストはちょっと涙。
・「<夜行人種>の歌」ラリイ・ニーヴン 未読の「リングワールド」シリーズの、しかも長くなりすぎて結末までいかず途中で終わってる作品、とあって相当危ぶんだんですが、あにはからんや意外と面白く読めた。続きが気になってリングワールド読み出すほど、ではなかったですが。


総じて女性のヴァンパイアが多かったですね。昨今これは珍しいのかな?