M「吸血鬼カーミラ」シェリダン・レ・ファニュ

創元推理文庫


ちゅうわけで、本家本元の吸血鬼ものを読んでみた!(本家本元は言いすぎか。ポリドーリの「ヴァンパイア」があるので祖というわけではないですね。)


レ・ファニュは、「緑茶」だけ読んでて、それがど〜も長い上にかったるかったんで、いまいち敬遠してたんですが。
なかなかどうしてこの短篇集に集められてるものは良かったですね!一作だけで決めちゃダメ>わたし。


・「大地主トビーの遺言」財産相続した兄弟の確執。地主となった弟につき従う先代からの執事。これは美味しい!特にこの執事の老人がいい味だしてます。結構ズケズケ言っちゃうし。
・「判事ハーボットル氏」もなかなか。死人の御者が駆る馬車で死人に囲まれる。死ぬ日を予言する手紙。縄を持った亡霊。道具立て揃いまくりで嬉しい。


しかしやっぱ「吸血鬼カーミラ」が出色ですなあ。カーミラ滾りすぎ!令嬢ローラに対し、抱きつき・手を握り・髪に顔を埋め「あなたはわたくしのために死ぬのよ」「だれとも恋なんかしたことなくてよ。あなたとでなければ」「あなたはわたくしを愛しながら、わたくしと一緒にきっと死ぬのよ…」連打、連打です!熱すぎます!そしてしつこすぎます!挙句ローラに「ほんとに迷惑で、いっそ恐ろしくなる」とドン引きされる始末。ばっかだあ…。
結末はアッサリ。あらこんなんで死んじゃうの?みたいな。以前見たハマー・フィルム版「吸血鬼カーミラ」は終盤色々手が混んでたのも、映画的には原作通りじゃ保たんわな、と納得。


ラスト、ぼんやりとカーミラの美しさやフトした様子を夢のように思い出すローラの様子が、「まあ初恋ね(はぁと)」で微笑ましいです。
吸血鬼ですけどね!あのままだったら死んでましたけどね!