S「日本一あぶない音楽 河内音頭の世界」 全関東河内音頭振興隊 編 

JICC出版局


私は大阪育ちであるが、河内音頭についてそれほど知らない。
子供の頃、地元の盆踊りでは9時前にはドラえもん音頭がかかって、子供達にアイスキャンデーが配られた。そこから櫓の上で派手な河内音頭が始まって大人の時間になった…ような記憶がある。
それから15年以上過ぎて会社勤めをしていた頃、落語フリークの友達に「贔屓の落語家さんが音頭取りしはるから」と誘われて行った盆踊りが実質の音頭デビューである。トランスのイベントもパンクのライブも比較にならない位のトライバル空間を体験したのはその時が初めてであった。
そして昨年の晩夏、美術展で訪れた大阪港。乱舞する河内音頭の輪の中で、職場の女性が真剣に踊っているのを偶然目撃して驚愕した。彼女はある音頭取りさんに魅せられて、あらゆる音頭場に出没しているとのことだった。それが私と河内音頭の3度目の出逢い。
この本を読むと、河内音頭の歴史とか地図上の分布もよくわかる。それがなぜか東京(の一部)で爆発してしまった経緯も面白い。「ミュージック・マガジン」誌の執筆陣が多いせいか、ワールドミュージックや黒人音楽と並べて語ったりして恥ずかしい所があるが、団鬼六氏や研究家の村井市郎氏など多彩な顔ぶれで20名以上の河内音頭好きが熱く語っている。
読んでいる間はずっと頭の中で♪え〜えんさぁぁてはぁぁ〜と音頭がループし続け、浴衣を着た小さい人達が輪になって踊り続けていた。家に音頭のレコードがないので音頭ぽいドイツのテクノとか聴いて過ごしたけれど、オフシーズンでなければ必ず櫓を求めて奔走したはず。