M「狂骨の夢」京極夏彦  

講談社文庫


これはなかなか面白かったです。朱美の“夢か現か現世か前世か”の記憶が繰り返し書かれる、そのゆっくりした導入部がムードを高めていってくれます。朱美のキャラも小気味良くて楽しかったです。
匣といい骨といい、それぞれについて深く考えを巡らせあらゆる角度から思考して、それぞれにまつわる事件をいくつもひねくり出しているのもすごいなと思いました。例えば「匣」なら、脳は骨によって囲まれた匣だ、とか、立方体の実験装置に研究所、バラバラ死体を入れるのは全て匣、匣に魍魎を封じ込める新興宗教。「骨」なら、「死ぬと皮や肉や髪の毛は抜け落ち、残るのは骨だから、人の心が最後に残るのは骨だろうか、妄念や執念は骨に宿っていつまでも消えないのだろうか」とか。様々に想像を巡らすことが出来て面白かったです。