S「ラヴクラフト全集(1)」ハワード・フィリップス・ラヴクラフト

SandM2005-02-11

創元推理文庫


昨日の「怖かった…」でマジコワな一冊を思い出してしまった。
高校時代に買って、いつの間にか旅に出てしまって手元に残っていない(ので記憶が定かでない)本。
1920年代の怪奇小説で、ストーリーよりも本を開いた時に感じた空気が記憶が残っている。暗黒の地下へ続くじめじめした道とか、邪悪な存在の低い叫びや、風に乗ってやってくる生臭い匂いとか、五感に嫌な感じがひたひたと押し寄せてくる。彼が創設したクトゥルー神話はひとつの世界観として完結しており、触発された他の作家達が少しずつ手を加えてその世界を拡張させている。予期しない所でラヴクラフトにつながる話を読むことがあるので、本当に存在する神話なんじゃないかと疑うことさえあった。
当時は知らなかったけれど、国書刊行会が出している本は装丁がギーガーだったりするのですね。「エイリアン」のじめじめ・ぬるぬる&生臭そうな感じはまさにラヴクラフトだなと今になって思う。暗黒の邪神や太古の混沌に惑わされ、じわじわ狂気に陥る感覚を味わえる。徹底的に邪悪な世界に、なすすべもなく恐怖するのみ。