S「ガダラの豚」中島らも

集英社


三谷氏のエッセイはとても面白い。テレビに出演しても面白い。結婚記者会見で「結婚のきっかけは?」と聞かれて、奥様の小林聡美さんが「入籍しないとマンション購入のローンが組めないから」と笑顔で返答していたのが鮮やかに思い出される。素敵なふたりだなと思う。


対談やエッセイが面白いと言えば、昨年急逝されたらもさん。2年くらい前に京阪京橋駅の改札前で、らもさんが佇んでいるのを見かけた。その姿が忘れられない。とぼけた味と彼の手によるイラストが好きだった。今手元にはエッセイがないので、小説の中では一番好きなこの作品を。
アフリカから連れ帰った娘を追って、日本に現れるアフリカの呪術師。無機質で薄い色に見える街で、呪術師の濃厚な色彩が無気味な存在感を持って浮き上がる。何がどうと言えず、ぞわぞわと怖い。自分の常識でどうにもできない強大な力がどこまでも追って来るのだから、後ろを見るのも怖い。しばらくは表紙を見ても怖かった。文化人類学的ホラーだが、体育会系でもある。テレビ局での大立ち回りが圧巻。