S「ダルタニャン物語」アレクサンドル・デュマ

SandM2005-02-09

講談社文庫


子供の頃からの私の友人達、ダルタニャン、アトス、ポルトス、アラミスの物語である。なんと言っても世界で一番愛している物語はこれなのだ。
実在の人物をモデルにした「ダルタニャン回想録」を元に、舞台を17世紀に設定して歴史上の人物をからめて書かれている。これが新聞小説として連載されていた19世紀、日本はまだ江戸時代で武士がいた頃。邦訳も数あるけれど、読んで一番楽しく長編の全てを刊行しているのは鈴木力衛訳の講談社文庫*1。たびたび映画化もされて有名な「三銃士」は1・2巻、第2部「二十年後」は3〜5巻、第3部「ブラジュロンヌ子爵」が6〜11巻である。
剣豪、ロマンス、冒険活劇。節度ある忠誠心とさっぱりした男の友情。1巻でダルタニャンから王妃の首飾りを取り返す為の命がけのロンドンへの旅をうち明けられ、アトスはこう言う。

行けと言われた所に行って死のうじゃないか。
人生なんかにいちいち理屈をつけるほどの値打ちがあるもんか。
ダルタニャンおれはいつでもついて行くぜ。

冒険や剣の勝負が華やかだった時代も過ぎ、彼らも歳を重ねてゆく。友情はあれど政治的には敵味方になることもある。その辺りの割り切り方も私は好きだ。人間くさい登場人物には長所も短所もちゃんとある。野望の為に友を裏切る人も裏切れない人もいるが、どちらも私の大切な古い友人である。
第3部では一人ずつその人生を終える様が描写される。ポルトスの最期なんて、何度読んでも泣けて泣けて仕方がないのだ。読む時によって、感情移入する人物が変わるのも魅力。読めもしないのに、各国語の訳本を買ってしまう私はほとんど中毒かもしれない。ほんとに、それくらい好き(力説)。

*1:廃刊になっているが、「復刊ドットコム」というサイトで復刊している。