M「ゾマーさんのこと」パトリック・ジュースキント

SandM2005-02-03

文藝春秋


閉所恐怖症のゾマーさんは、雨の日も雪の日も、ただただ、歩く。歩く。歩く…。
「香水」と同じ著者なのですけれど、あの奇想天外な濃密さを想像すると、雰囲気が違うのでびっくりするかもしれません。ハンディタイプの薄い本で、言葉も平易な絵本調です。けれど、少年の視点から描かれたこの本は、ほんとうに、しみじみ、哀しいです。ゾマーさんが放つたった一つの言葉がずしりと響きます。ジャン・ジャック・サンペの挿絵も秀逸で、思い出すだけで泣けてきます。