M「長い日曜日」セバスチアン・ジャプリゾ

SandM2011-02-23

創元推理文庫


以前イザベル・アジャーニ主演「殺意の夏」を観たのですが、その原作者ということもあって、以前からなんとなく気になってたこの作品。縁あってこのたび手元にいらっしゃいました。
で、読み出したら、あれよあれよ、もう引き込まれて、一気に読まざるを得ませんでした。


車椅子の少女マチルドが、第一次世界大戦で消息を絶った婚約者の行方を探すため、婚約者の仲間の兵士、その妻や情婦や、新聞広告で探し出した当時を知る人たちに、手紙を出し会いに行き話を聞き出します。
それらの途上、だんだんと隠された事実が明らかになります。意外な繋がりが見えてきます。


兵役から逃れるためにわざと自らを撃った事が露見したため、軍法会議にかけられ処刑の場に引き出された5人。
5人は年齢も出身も生い立ちもさまざま個性的で、それを知っていく過程が楽しい。頭に入っていくにつれ、彼らに対してなんともいえず親しみが沸いてきます。
彼ら5人以外でも、彼らに関わる軍医や上官もそれぞれ特徴あり、ことに、<恐怖の的>・<特別調達ラブ・ド・ラブ>と呼ばれるセレスタン・プーという兵士はとっても魅力的。彼は後年マチルドのところまできて自分の知っていることを話してくれるのですが、そのまま何週間か居つき、その人懐こさや人間的魅力で、マチルドの世話をする使用人夫婦の心も掴んでしまいます。


結末は叙情的で美しい。終わり近くで「まさか?」と思ったらそのまさかでした。
はじめはちょっと腰砕けかしらとも思ったのですが、でも再度読み返すと、この方が、大仰ではなくさりげなくていいのかなとも思えました。
登場人物はどの人も魅力的だったのですが、ことに主人公マチルドは、一心に婚約者を想い、謎の解決を求めて粘り強く根気よく、一心に婚約者を想う姿が印象的です。いやあまさにヒロイン!的な。これぞヒロイン的な。ヒロインの鏡的な(くどい:笑)