M「地球の長い午後」ブライアン・W・オールディズ

ハヤカワ文庫


寒い季節に読んでみました「HOTHOUSE」。
こーれーは!すごいなあ。ほんますごい。
何がすごいかって、このイメージの奔流!


何十世紀も先、地球の自転は止まり、永遠に片面が昼で停止した未来。
太陽の放射線が力を増し、植物が進化し、変化し、圧倒的優位に立っている。
人間たちは、たやすく殺せる絶滅寸前の生き物、地球最後の獣となり、地上から逃れ、樹上へ住処を求めた。
人類は獰猛な植物たちによって苦もなく餌食になり、死は「緑に落ちる」と表現される。
死亡率が飛躍的に高くなり、人間たちは一夫多妻制を取り、多くの子供を作る。


とにかく進化した植物たちの種々多様な姿が、これでもかとめくるめく想像力の限界超えです。
鬼喰<オニクライ>走鞭<ハシリムチ>日陰罠<ヒカゲノワナ>緑騙<ミドリダマシ>
そして森の頂きを支配している綱渡<ツナワタリ>は、顎と脚をもち植物性の毛に覆われた巨大な風船。
彼らのケーブルは地球上をクモの巣のように覆い、地球と月の間さえも網のように繋いでいる。
人間たちは死ぬと、「魂」とみなした人型の人形を、透明のフエアザミの莢にとじこめ、ツナワタリに乗せて「天」へはこび、家胡桃<イエクルミ>の中をくりぬき中の繊維を切り裂いてベッドを作る。
って、これだけでも、もううワクワクが止まりません!


とはいえこれはまだまだ序章。グループの一人グレンが群れを追い出され、あちこちを彷徨うに伴い、老いた地球の他の面、さまざまな世界が次々に描写されていきます。
それは殆どが荒涼とした世界、生きるために奇妙に一部分が特化された不思議な植物生物が跋扈する世界です。
中でも雲母板を窓のようにはめこんだ海底通路は、キラキラと素敵でした。


グレンが、思考するアミガサダケに乗り移られてからは、長い物語が始まります。
「皮膚病を思わせる茶色で、海綿のような組織を持ち、キバチの巣のような穴が一面に空いている」この不気味な生物はみずからの種を繁殖させるため、とりついた生物の思考を操作し、さまざまに操ろうとします。


ラストは冒頭と繋がり美しい円環。そこでグレンがとった選択肢も、納得の心意気。
頭いいかもしれないけど何を考えているかわからないアミガサに操られて いうがままに生きるなんて嫌ですもん。
少なくとも私はそう思いますもん。
というわけで、気持ちよく読み終わりました。


しかしこれは映像で見たいですなあ!難しいとは思うけど映像で動いているとこが見たい〜!