M「項羽と劉邦」司馬遼太郎

SandM2010-10-22

新潮文庫


おお中国歴史モノがきましたね!偶然にも、私もこれを書きたくて仕方なかったのですよ〜。
というわけで、「項羽と劉邦」です!


やーもう、これは凄い!思わず血反吐!
とりあえずいっぱいひとがでてくるので、おぼえるのがたいへんです(小学生読書感想文)
けど、でも、一巡してみたらアラ不思議。S様のまねっこになりますが(笑)「えっこんなとこにこんな人が!」の連続で、二巡三巡すればするほど、面白くて仕方ない!
胸に迫るシーンが沢山あり、また司馬せんせいの薀蓄も楽しく。


色々ありすぎて書ききれないですが、私が一番惹かれたのは、中巻ラスト付近に出てくる紀信と周苛ですね!紀信は劉邦の悪口ばっか言ってる男です。でも本当は劉邦が好きで好きで仕方なく、終いには劉邦の身代わりに焼き殺されます。周苛は紀信の幼馴染み、劉邦に紀信を悪く思われたくないと涙を流して言葉を詰まらせながら紀信を庇い、紀信と共に劉邦脱出後の城を守って煮殺されます。このへんといったらもう!
あと上巻ラスト近くの章邯将軍も泣かせます。秦を守るための孤軍奮闘、しかし朝廷は宦官趙高に牛耳られ一顧もされず、はじめて項羽に武勇を認められた章邯将軍は男泣きに泣くのです。その後の末路は哀しすぎますが…。
大体序盤からして、始皇帝の死を隠して悪巧みをする趙高の描写からしてぐっと引きつけられます。
女性軍も、数は少ないが其々印象深い。韓信が連れる秦人の女、項羽の虞姫など、どれもキリリといさぎよい。
あと張子房とか夏候嬰とか酈食其とか、項羽の軍師范増とか、かって刎頚の交わりを誓ったにも関わらず仲違った張耳と陣余とか、出てくる人皆魅力的で、もう書ききれません!


して、肝心の項羽と劉邦。人の運というのは不思議だなあと思います。人としてのパワーはどうみても項羽が強いと思うのですよ。けど、最後近くになると、あれよあれよという短い時間で、項羽が劣勢に追い込まれた。死に方の壮絶さを見ても、項羽という人の放つ強烈なオーラを感じてしまいます。
劉邦は「人を使うのがうまかった」と言われているようですが、(ここには書かれていませんが気になって調べてみた)漢立国後の経緯を見ると、どうも首をかしげてしまいます。妻の呂氏に唆され、貢献した側近達に疑心暗鬼。あれほど活躍した韓信も謀反の罪で殺されますし、張子房も子供の代でお取り潰しです。これを見ると、“単に天下取るまでの劉邦は自信ないから良さげな意見あったら片っ端から採用してみた。いくつか失敗(庶務の小男の献策に乗って函谷関を閉じてしまったり)したけど、いくつかは幸運にも当たったから、結局天下取れた”だけ、のようにも、思えたりなんちゃったり。
とにかく、様々人間模様が濃厚で飽きません!
三国志演義含め「一騎当千」や「恋姫†無双」など、女体化が盛んですが、項羽と劉邦はどうなんでしょう?寡聞にして存じませんが、あったら見てみたいなあ。