M「ラッキーマン」マイケル・J・フォックス  

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「エンジンの爆音と思考の静寂」アガタ・クリストフはハンガリーから亡命後一日中女工として働いていて、その工場の騒音にはじめは思考を奪われ、やがてそのリズムと共に言葉を紡ぎだしたんですって。圧倒的な轟音は思考の静寂をもたらすのかもしれません。“一つのものを奪われたとき別の部分が鋭くなる”ということも想いました。視覚を失った人の嗅覚が鋭くなるように。
で、ちょっと方向は変わるのですが、この作品。
パーキンソン病を得た*1「バック・トウ・ザ・フューチャー」のヒーローによる自伝。前々から評判だけは聞いていて、読みたいなあとは思っていたのですが、思ったより文章うまい!読みやすい!一読してその真摯な文章に「ほんと真面目な人なんだなあ」と思いました。ハリウッドスターとしてのマイケルに対しては、ほとんど地味な印象しかなかったのですが*2、ハリウッドから浮くような真面目な性格だったからこそパーキンソン病と向き合えたんだと思う。舞台劇をプロデュースしたりしていたのもこれを読んで初めて知りました。今は“ハリウッドスター”ではないだろうけれど、毎日を目的持って生きている彼は幸せなんだなって思ったです。

他にドン・デニーロ「ホワイト・ノイズ」やジョゼ・サラマーゴ「白の闇」も思い浮かびました。同時に「宇宙にぽつんと一人だけでいる」でアラン・シリトー長距離ランナーの孤独」を思い出したりして、なんだか楽しい。これらの作品については、機会があればまた書きたいです。

*1:この場合「かかった」「なってしまった」より「得た」の言葉がふさわしいかと思うのであえて

*2:当時は『隣のお兄さん』的人気を博したらしいけど、私のお隣には白人はいませんもん