M「怪奇礼讃」中野善夫・吉村満美子編訳

創元推理文庫


うっふん。玉石混合なれど、好きなものも幾つか。


・「塔」マーガニスタ・ラスキ これ怖えええよ!血どころか、幽霊さえも出てきませんよ?それでもゾオオオオッとするの。凄腕!
・「よそ者」ヒュー・マクダーミッド うまいなあもう!さりげない暗示がもう。悪魔とか言葉にも出ないけどね。あれです、ブラウンの「翼のざわめき」的な(とてもわかりにくい喩え)
・「祖父さんの家で」ダイラン・トマス とてもとても不思議な物語。ベッドの上に起き上がり、躯を左右に揺らして「どうどう!」「走れ!」と叫ぶお祖父さん。とっておきの服装で橋の上に立ち「ランガドックに埋めてもらいにいくところだった」というお祖父さん。これは…かなりいいです!。ちょっと不思議で・明るい光景で・でもすごく哀しい。ぐっときます。ディーノ・ブッツァーティ「落ちる娘」みたいな良さです(またもわかりにくい喩え)
・「メアリー・アンセル」マーティン・アームストロング これも良かったなあ!幽霊譚というよりは、切ない・切ない・思い出話。
・「溺れた婦人」エイドリアン・アリントン ちょっとSF的。時を越え未来の幽霊を見る、というモチーフが良かった。


ベリスフォードの「のど斬り農場」が末尾を飾ってたのはちょっと意外。以前読んで、それほどでも…と感じてたからかな。
同じくダンセイニ卿は「谷間の幽霊」が選ばれてたのも、ちょっと意外でした。これそんなでもない…。
でも幾つか発見もあったので良かったです。