M「ハンニバル」トマス・ハリス

新潮文庫


えー…。読了して正直脱力。
何より、レクター博士が、どんどん超人的になってるのに唖然。優秀な精神科医で腕時計のバンドや化粧品までかぎわける動物的嗅覚持ってて美食家でクラシック音楽や建築や美術にも造詣が深い…というのは前作でも描写されてたけど、
今作では更に、自ら数式を書き上げるなど高等数学/理論物理学に詳しく・古書を読みこなしダンテ研究家を唸らせる深い知識を有し・イタリア語を流暢に話し・勿論料理器具や食材やワインには洗練された趣味を持ち・テルミンなど楽器もひきこなし・ナイフや車にも詳しい…


って、どこのスーパーヒーローですかあんた!


うわあ浮世離れしすぎな感じで、ちょっと辟易。
超人レクターに比して、彼を狙う敵役(パッツィとかメイスンとか)はどんどん小物に。レクター様の引き立て役にしか見えません。
しまいにゃクラリスと一緒に脳味噌喰らって愛の逃避行ですよ。はっきり「セックス」書かれてましたからね、ええ。
そこに至る伏線はもちろんちゃんと張られていますけれど、そこへ持っていくために、クラリスがどんどん追い詰められ自身も情緒的に不安定に弱くなっていったのが、またまた個人的には「…」。
男社会で歯を食いしばって、レクターに惹かれながらも踏みとどまるクラリスが好きだったのですよ…。
とにかくレクターが(妹ミーシャのトラウマ含め)格好良く描かれすぎてて、なんだかもにょってしまいました…。