宗 左近訳
Mさんの「野菊の墓」を読んで、泣きぬれています。
コメントにも書きましたが、こんな悲しいお話だとは知りませんでした。
その丁度同じ時期、私は「黒いチューリップ」を読み返していました。
お花つながりで、今回はチューリップで参ります!
私が古今東西の小説家の中で一番好きなのは、アレクサンドル・デュマ(フィス)です。
中学生の時に毎月のお小遣いで「ダルタニャン物語」を一冊ずつ買い揃え、心躍らせて読んでいました。
「モンテ・クリスト伯」も大好き。
そんな訳で大!大好きなのに、なぜかアラン・ドロンで映画化されてた記憶から「怪傑ゾロ」が混じってて、内容を間違って覚えてました。
剣豪がまったくでて来ない!最後まで!義賊の胴衣に黒いチューリップの刺繍があったんじゃなかった?あれれ?という結末でした。
舞台になるオランダではオレンジ公ウィリアム、フランスはルイ14世の治世。
政治の陰謀に巻き込まれたチューリップ栽培家の青年と、彼が投獄された監獄の獄吏の娘が恋に落ちます。
世界にまだ存在しない黒いチューリップを創り出すことに情熱を注ぐ青年。
読み書きを知らないけれど、賢く美しい乙女。
独房の格子越しの短い逢引。本当にドラマチックでロマンチック。
血生臭い恐ろしい事件も人の悪意も絶望もある話ですが、恋する二人のことを神様はちゃんと見てくれています。
野菊の持つ哀しみとは遠く離れた、夢のようなチューリップの世界です(まだ野菊の墓を引きずってる)。
作者がしばしば現れては、「読者諸氏もご存知のように」とか言い出すのが好きです。
どの作品よりもドラマティックな人生を送ったデュマ、そのご本人からお話を聞いているような気持ちになるのです。
文庫版は1971年が初版で、私が持っているのは1984年の10版です。
奥付に訳者の紹介と住所が書かれているので、お手紙や感想を書いて送れたのですね。
まだインターネットなどない良き時代の本だなと思います。