M「猿来たりなば」エリザベス・フェラーズ

創元推理文庫


これは好きです。
後書きによれば、彼女の作品を形容するのにしばしば使われるのが、<ドメスティック・ミステリ>なんだそうで、これは平和そうに見える家庭や小さなコミュニティーが舞台の推理小説のことらしく。
って、私嫌いなわけがありません!
その上、そこはかとなくユーモラスで、パズラーとしても整合性があるとなれば、ゆうことない。
衝撃!とか号泣!とか人生の一冊!ではありませんが、忘れた頃に読んで何度も楽しめる感じ。私的には池波正太郎さんやアガサ・クリスティーに近い位置づけです。


文章は平易でよみやすく。そして登場人物が、ちゃんとミステリに出てくるキャラクター(なんじゃそりゃ)してるのが良いです。
一癖あるお金持ち、怪しい外国人、イケメン医者、とかとか。
黄金期ミステリでよく見る顔ぶれ。ハイキタキタキター!そうです好きです大好きです。
かといってまるっきり定型・作者の操り人形だという訳ではなくて、例えば嘘ばっかりついてる動物心理学者の娘や、美しいけど自己中心的な出戻り娘や、真面目すぎて融通きかない不器用な秘書や、特に女性のヤな部分を生き生きと、客観的かつ嫌味なく書いてるのが面白かったです。
どんでん返しもなかなか。ラストのオチは予想できましたが、むしろ、そうくるよね、こなくちゃね!と気持ちよく読み終わりました。